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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
52.圧倒なる狂気
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激しい激突が大気を激しく波打ち振動する。振動は衝撃波となってあたりの建物を粉砕していく。
「ダメ、霧の補強が意味がないわ!」
美鈴が切羽詰まった声を荒げる。不鮮明に彩られた世界の中にある建物はいとも簡単に崩れていく。霧化によって質量をなくしているはずのものが崩れるなどということは普通に考えればありえない。
海原の眷獣のように広範囲攻撃によって霧そのものを消し飛ばさない限り、そんなことありえるわけがない。
病院を必死に守護する黄金の翼を持つ梟。意志すら持たず、ただ本能のままに暴れまわっている白銀の小さな翼が四本の足に生えている翼同様の輝きを放つ角を持つ羊の眷獣だ。
その眷獣を出現させている人物は柚木たちの目の前にいる。色素の薄い長髪。いつもは穏やかな表情であるが今は苦痛に顔を歪めている。神父が着るような服装をしており、首には無数の十字架がかけられている。
「目を覚ましてください、南さん!」
柚木は叫ぶ。しかしその声は届くことはなく爆音によってかき消される。
まるで意志を持たない人形のようにぐったりとしてその場から動こうとしない。しかしとめどなく魔力が大気へと放出されて近づくことすら困難になっている。
「柚木ちゃん、私が少しの間だけ彼と眷獣の気を逸らすからアテーネの翼で彼の目を覚ましてちょうだい!」
「わかりました!」
暴走した眷獣であろうと魔力を無力化すれば形をこの世界に保つことができずに元の宿主へと戻っていく。眷獣を強制的に魔力へと戻せば、吸血鬼の体が魔力の消化不良のような状態になり、ダメージを受けることになる。
そうすればこちらの最終兵器である眷獣を吸い取ってしまえば、彼の暴走は止めることができる。
「───来なさい、“
純愛なる白兎
(
アフロディテ・ダット
)
”!」
美鈴が叫ぶ。すると何も存在しなかった空間から無数の泡が出現する。それは徐々に純白で艶やかな毛並みの兎の姿を形作っていく。しかし、その姿は泡になって消滅し、また再生するを繰り返す。
固定した形を持たず、触れれば消えてしまう。だが、それはそこに確実に存在する。
これが実態すら掴むことができない“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”の眷獣なのだ。
“
純愛なる白兎
(
アフロディテ・ダット
)
”の体は兎の原型を崩してただの泡の集合体へと変化する。元の兎の姿から何十倍にも膨れ上がり、そのまま増殖し続ける。
羊はそれを鬱陶しがるように角と足をで泡を消していく。それが“
純愛なる白兎
(
アフロディテ・ダット
)
”の幻覚の始まりになる。
無限に広がる泡に触れることでそのものは永遠の夢幻へと誘われていく。
「今よ、柚木ちゃん!」
「はい!」
柚木は夢幻に誘われた眷獣を睨みつけた。
「行って
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