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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
52.圧倒なる狂気
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へと返す。
「ンなもんかよ、それでよく十一番目を倒せたもんだなァ」
苦痛に顔を歪める少年に対して吸血鬼は余裕な表情だ。あれが“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”の眷獣だというならあれを倒してしまえば、この場は凌げる。
そう思った瞬間だった。少年が金髪の吸血鬼めがけて駆ける。その表情からは一か八かの賭けに出たように見えた。
「急にどうしたよォ?」
金髪の吸血鬼が指の骨を鳴らした。それとともに漆黒の獣が少年めがけて疾駆する。
速い!
今まで手を抜いていたとでもいうように凄まじい速さで少年へと襲いかかる。すると少年の左の方に銀色の軌跡が出現する。
「あれって……」
彼の左手が握っていたのは“
六式降魔剣・試
(
ローゼンカヴァリエ・プロト
)
”だ。右手には“
無式断裂降魔剣
(
ディ・イルズィオーン
)
”を握っている。
二刀流だ。獅子王機関の兵器で二刀流をするなど聞いたこともない。それに鉄で出来た刀を二本を同時に振ることなんてどう考えても不可能だ。しかし重さなどまるで無いとでもいうように彼は軽やかな動きだ。
「獅子の御門たる高神の剣帝が崇め奉る──」
彼の口から紡がれているのは祝詞だ。すると左右の銀の刃が同時に輝きを増し出す。
「虚栄の魔刀、夢幻の真龍、神域の翼膜をもちて闇夜を穿つ力となり……」
それは友妃が知っている祝詞だ。しかしそれは終わることなくさらに紡がれていく。
「荒れ狂う生命の源より、悪しき者を浄化せよ──!」
少年の祝詞に呼応するように二本の刀からそれぞれ神々しい光を放つ翼が片翼づつ出現する。
そして疾駆してくる漆黒の獣の前に無数の水で出来た剣が出現する。先ほどの祝詞を破棄して出現したものとは明らかに魔力の純度が違っている。
少年が走りながら二本の刀を重ね合わせたと同時に無数の水の剣は漆黒の獣へと襲いかかっていく。
再び、咆哮し水の剣を無へと還していく。しかし、祝詞が込められた剣を全て消滅させることなどできない。十数本の剣が漆黒の獣へと突き刺さり、悲鳴に似た咆哮を上げた。
その瞬間だった。少年は一気に地面を蹴り上げて眷獣との距離を縮める。
左手の“
六式降魔剣・試
(
ローゼンカヴァリエ・プロト
)
”が左斜め下から一気に振り上げられる。続けて一切の間を空けずに右の“
無式断裂降魔剣
(
ディ・イルズィオーン
)
”を腰の回転を利用して一気に振り下ろした。
とてつもない獣の絶叫とともの漆黒の獣派元の魔力へと還されていった。
友妃は目の前で起きた出来事に目を疑うしかなかった。真祖に並び立ち吸血鬼の眷獣相手に二度も互角に戦って勝利し、友妃すら知らない術式を操るこの少年は何者なのだろう。
だが、自らの眷獣を失ってもなお、金髪の吸血鬼は余裕の笑みを浮かべ口を開
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