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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
52.圧倒なる狂気
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血鬼だとわかっても普通に接してくれた。どれだけ危険だとわかっていても助けに来てくれる。ヒーローの真似事をしてるボロボロになった少年。
「……彩斗」
柚木は小さく呟いて彼がいるはずの場所へと向かっていく。
轟音が大気を劈いた。それから一瞬遅れて衝撃波が辺りへと襲いかかる。吹き飛ばされないようにと友妃は必死で隆起した地面にしがみつく。
そんな自分がピンチだということすら忘れさせるほどに友妃は驚愕していた。
先ほど現れた金髪の吸血鬼が出現させた漆黒の体毛に真紅の瞳を持つ狼の眷獣。そいつは一度、手を振るうだけで街をなぎ倒し、咆哮するたびに地面にクレーターを作り出す凶悪な眷獣だ。あれも“
神意の暁
(
オリスブラッド
)
”が従える一体なのだろう。
しかし、それ以上に驚きなのは、先ほどの少年が眷獣と互角にやりあっているということだ。操れないはずの“夢幻龍”の攻撃と防御を駆使しながら戦っている。
なぜ彼が“夢幻龍”を使えるのか考えられる可能性は二つだ。友妃が獅子王機関から自分しか操れないと嘘を教えられていた。もう一つが、彼は友妃同様に“夢幻龍”に選ばれた人間の一人である。前者を信じるのが楽な解釈かもしれないが、獅子王機関が嘘をつくわけがない。つまりは消去法で後者となる。
別にありえない話ではない。しかし、友妃が知らない術式を知っているというのには引っかかる。そもそも“夢幻龍”にはいくつの術式が組み込まれているのだ。一つの武器から複数の術式を発動させる兵器は少なからずある。しかし、“夢幻龍”の術式はその全てが桁外れの魔力を誇っている。
まるで吸血鬼が操る眷獣を武器という小さな形に無理矢理抑え込んだようにだ。
「いいねェ……最高じゃねェかよォ!」
友妃の耳は金髪の吸血鬼の狂気に満ちた歓喜の声に我に帰る。
そうだ。今はこんなことを考えている時ではない。どうにかしてこの戦いを止めなければいけない。
金髪の吸血鬼は、遊んでいるかのように街を破壊していく。それをなんとか彼が防ぎながら攻撃のチャンスを狙っているという感じだ。しかし、どこか動きが先ほどに比べるとぎこちない気がする。
「どうしたよォ? さっきに比べると動きが鈍ってんじゃねェか?」
「……黙れ」
少年が銀色の刀を強く握りしめると神々しい光を放ち出す。その光に引き寄せられるように大気中に存在している水の粒子が集結し、無数の矢へと姿を変え、一斉に金髪の吸血鬼めがけて発射される。
祝詞破棄だ。“夢幻龍”の祝詞によって呪力を高めることなくその力を引き出すことも可能ではある。それでは威力は高が知れているほどしかない。だが、彼は祝詞をしたかのような威力を作り出している。
しかし金髪の吸血鬼の前に立ちはだかった漆黒の獣の咆哮がただの水
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