神の宴
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れる目に見えないプレッシャーに気圧されてバルドルは僅かに後ずさる。
「…………それがな…………」
「うん、何?」
テュールの作る通常の十倍に感じる重力場に生唾を飲み込む。
「……彼奴は…………妾の言うことを一個も聞こうとせんのじゃ!!妾は主神じゃろう!」
そんな重力場を吹き飛ばすように愛らしい怒鳴り声が上がった
地面をけり付ける足から発せられる小気味のいい音がそのいじらしさに拍車をかける。
「あ、うん…………そうだよね」
それにバルドルは肩透かしを喰らったように薄い反応を返す。
「じゃろう?それなのに彼奴は――」
「やっぱりどこでもままならないものだよね、はははっ。それより、テュールは誰かに会いに来たんだよね?」
テュールの話がかなり長くなると敏感に感じ取ったバルドルは話題を逸らして、会話を切り上げようとする。
「おお、そうじゃった。大事な用事を忘れるところじゃった。礼を言う。話の途中ですまないが、ここで失礼するぞ」
そんな意図に露ほども気付かず、テュールは礼まで言うと、たたたっと小走りで巨像の股間の入口に姿を消した。
その背中を見送ったバルドルは僅かな罪悪感に苦笑しながら、頬をカリカリと掻いた。
◇
「見つからん」
会場内は外よりもごった返していて、背丈がそのほとんどの神の腰までしかないテュールの捜索は困難を極めていた。
テュールが探索を初めて既に一時間が経過していたが、目的の神物は一向に見つからなかった。
壇上のガネーシャの声が会場に響き渡る中、それを聞き流す神々はそれぞれが好きな神と談笑していて、足元をきょときょと歩き回る存在に気付いてすらいない。
「そこの子よ。ちと聞きたいことがあるんじゃが」
これではじり貧だと思ったテュールは給仕を務める【ガネーシャ・ファミリア】の構成員を呼び止めた。
「?」
しかし、給仕は、人込み――とテュールの身長――の所為もあって、テュールの姿を見つけられず、キョロキョロと首を回すだけだった。
「こっちじゃ、こっち」
「も、申し訳ありません!わ、私にどのような御用でしょうか?」
傍まで近づいて、ズボンを引っ張られてやっとテュールに気付いたヒューマンのウェイターは神に手間を取らせたことに恐縮して慌てて答えた。
「うむ。今日、ヘファイストスは来ておるかのう?」
特に気分を害したそぶりを見せず、テュールは訊いた。
「ヘファイストス様でございましたら、あちらにいらっしゃいます」
「む?見えん」
ちょっとした騒ぎになっているところにいるヘファイストスをウェイターはすぐに見付け
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