第十七話 戦機、近づく
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宇宙暦796年 1月10日 同盟軍宇宙艦隊総旗艦ラクシュミ ドワイト・グリーンヒル
ぶち壊しだ、参謀達を落ち着かせ意識を合わせようとしたのに……、参謀達も私が何をしようとしているかは分かっていたはずだ。それなのに肝心の司令長官だけが何も分かっていない。
罵られた士官は顔を伏せ唇を噛み締めている。今後、彼がドーソン司令長官のために積極的に何かをする事は無いだろう。味方を減らし敵を増やしたわけだ。多くの参謀達が表情を消している。内心では呆れているだろう。自らの行為で評価を下げたわけだ。
ドーソン司令長官が忌々しそうに舌打ちして席に座った。
「もう一度聞く、どうすれば敵を打ち破れるのかね、君達はそれを考えるためにここに居るのだろう」
「……」
嫌味な言い方をする。それが原因で士官学校の教官時代、生徒に嫌われたと聞いているが本人は何も感じなかったらしい。
「一隊を迂回させて帝国軍の後方に回しては如何でしょう。後方を断たれるとなれば敵も撤退せざるを得ません。敵が気付かずに鬼ごっこを続けるのなら挟撃できます」
「うむ」
案を出したのはフォーク中佐だった。若手では俊秀と言われる士官だ。司令長官の傍に置いてある戦術コンピュータを操作して作戦案をモニターに表示し始めた。一隊が迂回して帝国軍の後方に出る動きを示し始める……。
ドーソン司令長官は頷いてはいるが必ずしも満足している様子ではない。敵を撃破出来るとは限らないことが不満なのだろう。ドーソン司令長官は焦っている。挑発されたため何が何でも敵を撃破したい、そう思っているようだ。
「それは止めた方が良いのではないでしょうか。敵の思う壺です」
フォーク中佐が案を否定され頬を歪めた。発言したのはヤン准将だった。ドーソン司令長官が准将に視線を向けたが決して好意的な視線ではない。准将はシトレ元帥と親しい、そのためドーソン司令長官はヤン准将を疎んじている。
「帝国軍がこちらに攻めかかって来ないのは我々に比べて兵力が少ないからです。挑発行動を繰り返すのも我々を苛立たせ兵力を分散し挟撃しようとするのを待っている可能性が有ります」
「……」
准将はドーソン司令長官の視線を気にした様子もなく言葉を続けた。見かけによらず神経が図太い。
「一個艦隊を別働隊にした場合、最大でも第二艦隊の一万五千隻です。帝国軍の二万隻には及びません。敵の後方に出る前に帝国軍に捕捉され各個撃破される危険が有ります」
「……」
ドーソン司令長官が顔を顰めた。忌々しそうに准将を見ている。
「敵の司令官、ブラウンシュバイク公は極めて有能で危険な用兵家です。その事はこれまでの戦いが証明しています。彼の兵力が少ないからと言って軽視するかのような作戦は取るべきではありません」
ヤン准将の意見に皆
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