第十七話 戦機、近づく
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ってやってられんだろう。俺だったら尻に帆かけて逃げ出すところだ。
ワルキューレのパイロット達には負担をかけてるよな。本当に済まないと思ってる。もうずっと索敵活動で酷使しているからな。敵艦隊に接触するとスパルタニアンに追い払われロスト、そしてまた索敵し接触……。ずっとそれを繰り返している。一応ローテーションを組んで休息を取らせているし食事やタンクベッドの使用も最優先でとは言っているが……、疲れてるだろうな……。本当に済まない。
あと二日だ、二日待とう。それで駄目なら潔く帰るんだ。多分駄目だろう、ドーソンだからな。でも一応言い訳は出来る。挑発しましたけどそれに乗りませんでした。どうにもなりません、相手はやる気無しです……。ま、そんなところだな。
帝国暦487年 1月10日 帝国軍旗艦フォルセティ エルネスト・メックリンガー
反乱軍は五万隻近い大軍を率いている。一方の我が軍は二万隻、半分に満たない兵力だ。正面から戦えば勝算は少ない、いや皆無に近いだろう。勝つためには不意を突くか、分断して各個に撃破するか、そのどちらかしかない。
当初ヴァンフリート星域に移動し反乱軍を引き摺りこむという案も出た。ヴァンフリート星域は索敵が難しく非常に戦い辛い場所だ。上手くいけば奇襲が出来るかもしれない、そこに賭けてみようと……。
しかし公はその案を採らなかった。“味方が劣勢である以上頼りになるのは目と耳でしかない、それを失う事は出来ない。そのような無理はすべきではない……”。つまり公が選んだのは分断しての各個撃破という事だった。但し、こちらが敵を分断する事は出来ない、相手が自らの意思で艦隊を分けるのを待つしかない。そう仕向けるための駆け引きがもう五日も続いている。
耐えている。ブラウンシュバイク公はじっと耐えている。戦況、と呼べるのかどうか分からないが両軍に目立った動きは無い。アスターテ星域とヴァンフリート星域の間を両軍は五日にわたって行き来しているだけだ。しかし兵力の少ない帝国軍にとっては決して楽ではない。相手は二倍以上の兵力を持っているのだ。駆け引きをするのは酷く疲れる。しかし公はじっと耐えている。
指揮官席に座る公に苛立ちは無い。昨日、熱を出して苦しんでいる時も苛立ちは無かった。幕僚である我々の方が苛立ち公に視線を向ける事がしばしばある。気付いているのか、気付いていないのか、公はただ無言で機を窺っている。まるで静かな湖のようだ、波紋一つ見えない。その姿を見て我々は苛立ちを抑えている。まだ大丈夫だ、まだ耐えられると……。
反乱軍はいつ焦れてこちらを挟撃しようとするのか……。辛抱強くそれを待つ公の姿は臆病で敏捷な獲物を狙う獅子のようでもある。一瞬の隙を突いて獲物を仕留める獅子……。そこに行くまでの辛抱は並大
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