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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第十七話 戦機、近づく
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が押し黙った。准将の言う通りだ、私も彼には苦い思いをさせられた。

「ではどうする」
不機嫌そうな表情、そして押し殺した声だ。ここまで露骨に感情を出す司令長官も珍しいだろう。しかしヤン准将は気にする様子もなく続けた。

「アスターテ星域に戻る事を提案します。こちらが動かなければ敵には打つ手が有りません。いずれは帝国に戻らざるを得ないはずです」
ヤン准将が口を閉じると沈黙が落ちた。ドーソン司令長官が不機嫌そうに顔を顰めている。

ヤン准将の提案はフォーク中佐の挟撃案に比べれば消極的ではあるが無理のない安全な作戦だといえる。戦果は挙げられないが損失も無い。帝国軍が為す術もなく撤退すれば国土防衛という観点からは十分な戦果を挙げたと言える、しかし……。

「それで、帝国軍は何時撤退するのかね」
「それは何とも」
「一ヶ月後かね、それとも半年後かね。それまで我々はアスターテ星域で帝国軍が家に帰るまでじっと待っていろと貴官は言うのか、話にならん!」

ドーソン司令長官が頬を振るわせて怒鳴った。気に入らない部下が気に入らない提案をした、鬱憤晴らしに嫌味を言って怒鳴りつけた、そんなところだろう。とんでもない男が宇宙艦隊のトップになった……。

「では如何なさいます?」
私が問いかけた。別に意地悪をしたのではない。司令長官の案をベースに話した方が早いと思ったのだ。不備が有ればそれを指摘し最善のものにする、或いは断念させる。それにこれ以上口汚く罵る姿を周囲に見せるのは士気にも関わるだろう。

司令長官がこちらを睨んだ。話を振られた事が面白くないらしい。一瞬口籠った後唸るような口調で案を出した。
「別働隊を帝国軍の後方に回し挟撃だ!」
結局それか……。明確な形で帝国軍を撃退した、それが欲しいのに違いない。

ここから先は私が相手をした方が良いだろう。参謀達が意見を出すと罵倒しかねない。
「ヤン准将も言いましたがそれは危険です。これを御覧ください」
司令長官の傍により戦術コンピュータを操作した。モニターに本隊が後退し敵が近づいて来る状況が表示される。別働隊は迂回しつつ敵の後背に出ようとしている。

「挟撃を成功させるには本隊を後退させ敵を引き付ける必要が有ります。それを行いつつ別働隊を迂回させ敵の後背を突かせる。この場合問題なのは作戦が進むにつれ本隊と別働隊の距離が開く事です。その一方で別働隊と帝国軍の距離が縮まる……」
「……」

「我が軍の中で最大の兵力を持つ第二艦隊でさえ一万五千隻です。そして帝国軍は二万隻。別働隊は単独で優勢な敵に近づくことになるのです」
宇宙艦隊司令長官に説明する事ではないな。士官学校の学生に説明するような話だ。しかし戦果を挙げる事に夢中になっているドーソン司令長官にはこれが必要だ。コンピュータ
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