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鐘を鳴らす者が二人いるのは間違っているだろうか
22.光が灯った日
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 今、きっとあの少年は自棄になっている。或いは周囲が見えていないのだろう。
 辛いだろう。苦しいだろう。認めたくないだろう。
 それでも、生きていて欲しい。

「生きていてください……!もう、目の前で失われる命なんて見たくない……!」
「同意する……!」

 アニエスもアイズも、奇しくも命の重さを良く知る者同士だった。
 ………実を言うと、その割には自分の命の重さをいまいち自覚していないから二人で飛び出すという無茶をするのだが。アニエスは言わずもがな、いくらアイズが強いと言っても深夜に見知らぬ渓谷に飛び出して足でも滑らせたらどうする気だと仲間なら言うはずである。

 少年の行先はすぐに判った。道に真新しい魔物の死骸や血痕が残されていたのだ。
 二人はそれを追いかけて前へ進むが、アイズは内心で疑問を抱いた。

(………恩恵(ファルナ)もないし、1週間も眠っていた病み上がりの男の子が、これを?しかもこの周辺の魔物はダンジョン第一階層と同等の強さなのに……?)

 倒された魔物はその殆どが的確に弱点である魔石、もしくは再生に時間がかかる頭部を破壊され、他の魔物は崖の下に突き落とされている。ノルエンデにいた頃は魔物相手に戦っていたのだろうか――力の弱い人間が効率よく敵を倒す方法をそのまま実行したような、実戦慣れした動きで戦ったのだろう。
 同時に、アイズは戦闘の痕跡から荒々しさと焦燥を感じる。冒険者としてダンジョンに潜っているからこそ、その痕跡から何となく戦った者の心境が分かるのだ。

「彼は、たぶん大穴に向かってる……村の安否を確かめに」
「はぁっ……はぁっ……わ、分かるのですか?」
「なんとなくだけど………うん。やっぱり大穴の方に向かってる」

 掟破りの地元走りと言わんばかりに岩の上に微かな足跡が残っている。
 魔物の血で汚れた靴のまま岩を駆けあがって最短ルートを進んだらしい。
 流石地元の人間、このようなルートを想定していなかったアイズは思わず感心する。

「そんなショートカットが……?ちゃんとした道だと遠回りだし……アニエス、こっちに!」
「は、はい!……ひゃっ!?」

 アイズは近付いたアニエスをそのままお姫様抱っこした。
 彼女とて伊達にLv.6の高みにいる訳ではないのだから、女の子一人を抱えて数Mの高さを飛び越えるぐらいのことは出来る。今は時間が惜しい。アニエスにこの道は無理でも、自分が抱えればショートカットは可能だ。

「飛ばすよ、アニエス。しっかり掴まって」
「え?え?……あの、アイズ?………きゃあーーーっ!?」

 瞬間、悲鳴を上げて必死に掴まるアニエスを抱えて、アイズは跳躍した。

「おい!向こうで女の子の悲鳴が聞こえたぞ!」
「まさか落ちたんじゃ……」
「馬鹿いっ
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