22.光が灯った日
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も全て呑み込んで――大穴だけが、そこにあった。
――本当は、分かっていたのに。
「――嘘だ」
――喪ったものは。
「嘘だ………!!」
二度と帰ってくることはないって。
「………ッ!!嘘だあああああああああああああああああああああああッ!!!」
ただひとり残された少年の慟哭は、ただただ空しく大穴へと吸い込まれていった。
――その日、少年は大切なものを『全て』失った。
= =
一方、唯一の生存者が行方をくらましたことでロキ・ファミリアは蜂の巣をつついたような騒ぎに見舞われていた。
「おい、少年はどっちに行った!?」
「渓谷の方だ!くそっ……夜目の利く奴はついてこい!連れ戻しに行くぞ!!」
「見通しが甘かった……!故郷を失ったんだ!精神だって不安定になるだろうに!」
「いいから急げ!!もうアイズとアニエス嬢ちゃんが渓谷に飛び込んじまったぞ!!」
唯一の生存者――ティズは、容体が安定していなかったために敢えてキャンプで治療を続けていた。ここ数日は容体も安定してきたためそろそろ野外キャンプから王国へと移そうと話していたその矢先の、この騒ぎである。
ここで彼を死なせたとあってはロキ・ファミリアは何のためにこの国へやってきたのか分からなくなる。それは兵士団も同じことだ。何としても、死なせるわけにはいかなかった。
そして、その危機にいの一番に飛び出したアイズは、立ちはだかる魔物を一撃の下に両断しながら前へ突き進んだ。その後ろをアニエスが息を切らしつつ追いかける。
「ごめんなさい、アイズ!無茶を言って着いてきてしまって……!」
「別に、いい!でも、絶対後ろを離れないで!」
――実はこの二人、今日の夜にこっそり大穴を見に行く計画を立てていたりする。
というのも、大穴の存在を危険視したロキがアニエスの大穴行きをきっぱり禁止してしまったのでアニエスは困っていたのだ。そこで一計を案じたアイズは、夜に見回りと称してこっそりアニエスを大穴まで案内する手はずを整えた。
あの看病していた少年の容体が安定したことで二人は安心し、今日まさにあのテント前の会話が終わったら実行しようとしていた。何故ならロキ・ファミリアは既に必要な調査を終了し、あの少年を無事カルディスラに届けたらその役割を終了してオラリオに帰ることになっていたからだ。
ところがそこで起きたのが、なんと少年の脱走である。
彼の看病を買って出ていた二人は思わず飛び出した。まるまる1週間ほど寝込んでいた患者が勝手に魔物が生息する夜の渓谷に飛び出した――それが如何に危険な事であるかは言うまでもない。一歩でも遅れたらあの少年は今度こそ短い命を散らしてしまうだろう。
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