第5話 : 刻星病・後編
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ランクアップのフェスティバル。
その大まかな説明をしてしまえば、それはファンの取り合いに他ならない。
出演する二人のアイドルのステージは隣接していて、そのステージの前には一定の人間が先着で入れる特殊スペースが存在している。
約100名前後の人間が余裕で入り、そのスペースの中央には明確なラインが引かれている。
それは区切りだ。今回に限って言えば、藤原肇と最上静香の投票スペースになる。
お互いに同時にパフォーマンスして、良かった方のスペースに立つ……そして、最後にスペースの人数の多い方が勝つ。それだけのシンプルな戦いだ。
だが、シンプル故に難しく。無策で挑めば十中八九で負け確定だろう。
何故かと言えば、これはその場でのファンの取り合いであり、そしてその先着スペースに漏れ無く集まるのは、例外なく出演するアイドルのファン……ならば、やはり知名度が何よりも物を言う戦いだ。
知名度の開きが大きければ大きい程に勝ち目は薄い、事実がファンの奪い合いと言っても、本当の意味でのファンは奪えない……
分かりやすく言えば、今この場で肇さんの相手が、俺を救ってくれたあの人ならば……俺はあの人を選ぶ。
例え……それがオバサンでも、人妻でも……俺はあの人のファンだからだ。
だから、これは戦う前から結果はほぼ決定している。
それを覆すのは、運か実力か、はたまた戦略か……
そう言う意味合いでは、今回は非常に巧く場を整えられたようだ。
俺の連日の徹夜からの情報拡散は、予想以上に藤原肇に対する興味を引き上げたようで、最上 静香のファンを予定よりも削減できた。それは=味方を増やした事にはならないが、それでも敵になる存在を、敵でも無いが味方でも無い存在にできたのは大きい……
少なくとも運は確実に味方をしてくれている。
そして次いで言えば、藤原肇と最上静香はタイプ的に似通っている。ならば比較しやすいために、実力で勝る肇さんに軍配は上がりやすい。
そんな下卑た打算は打ち砕かれた……藤原肇本人に……
誰がこんな事を予想できだろうか?
アイドルのフェスタ対決で全くの歓声が発生しないなんて……
なんて静かに、それこそ無神経な雑音を発すれば、叩き出されるクラシックのホールのように……皆、静かに息を殺して魅入っていた……藤原肇に。
ただ曲の伴奏と歌声だけが会場に響く。
藤原 肇の声。それはまるで天からの声だ。
カクテルパーティー効果なるものがある。
それは、カクテルパーティーの様な場所では無数の音が飛び交う。だが、どんな雑音が在ろうとも、人は聴きたい音を無意識に選別して拾うと言われている。
言うなればソレだ。藤原 肇の歌い出しりその一言目から俺達は支配された。
一
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