第4話 : 刻星病・中編
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と音無さんと……そして秋月 律子だけだった数年前……俺は就職先として765プロの扉を叩いた。
何でそんな弱小事務所を選んだのか?それは芸能界と繋がりを持ちながら、自由に動ける時間が欲しかったからだ……下手に高名な事務所に就職すれば、忙しさにかまけて本来の目的である人探しが出来ないから……
なんと自分勝手な事だろう。でも、あの時は余裕がなかったのだ。
実際にアイドルは律子一人で、しかも将来の勉強の為にセルフプロデュース。俺は中途半端な立ち位置で、雑務や営業して日々を過ごした。やる気もないスカウト等をしながら、時たま律子をフォローしたり、音無さんに事務仕事の効率化を施したりもしたか……
楽しかったか?それなりに楽しかった……でも、このプロダクションには未来は無いと見切りをつけたのだ。
三つ子の魂百までも。合理的な人間は最後の最後で合理的だ……ある程度人探しが済んだら765プロに長居はしなかった。無名の事務所よりも名のある事務所に渡った……
その時に律子も誘ったが据えなく断られたよ、これから所属するアイドルの為に残ると。
側に居たのにプロデュースしてやれなかったアイドル。それに後悔したのは敵対する961プロに入った後。あの人にアイドルの力になってくれと約束したのに、それを守ってなかったと気が付いて、せめて765と961の不和の解消だけは慌てて行った……
そして、765プロが安定したのを期に961プロを去って今に至る……
話終えたらなんて身勝手な話だろうか。少なくとも、自分は高木社長の方針とは相容れなかった。でも、それは律子をプロデュースしなかった訳にはならないだろうし、人手不足の事務所を見捨てる訳にもならない。これは完全なる自分勝手な理由だ。
「俺はさ……多分、徹頭徹尾そんな人間なのかも知れない、今は好意的でも、理由があれば今のプロダクションを……引いては君を捨てるかも知れない……」
後悔した。反省もしている。でも、それだけで人間の根幹が変動するかと言えば、その限りではない……実に寂しい事だが。
「………………辛い事を話させてすみません。でも、話してくれてありがとうございます」
その言葉に立ち止まる。
「辛いのは俺じゃなくて律子と社長と音無さんだよ……」
「いいえ。少なくともこの話をしている船橋さんは辛そうでした……
でも、話してもらえて良かった……私では問題の解決はできません。けど貴方の“星”にはなれます」
真っ直ぐ俺を見て、そして静かに微笑む。
「私が貴方の“星”となります。どんなに迷子になっても、どんなに暗闇に閉ざされても……
私が目印となって、どこに行っても必ず帰って来れるよ
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