第4話 : 刻星病・中編
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もしかしたら、俺が彼女を担当する未来も在ったかも知れないな……なんてセンチメンタルになったりもする。
さて、これで用件は終わった長居は無用。
「では、これにて失礼します。どうか正々堂々とお互いに良い戦いを」
「待ってください!一つ聞いても良いでしょうか?」
「どうぞ……」
まぁ当然だ。何かを言われる事は分かっている。それだけの確執はあるのだから。でも律子から言われたのは意外な言葉だった。しかも、そんな穏やか表情で何かを訪ねられるとは思えなかった。
「今のプロダクションでは続きそうですか?」
「……恐らくは、社長はなに考えてる分からないし、事務員は守銭奴だけど……続きそうです」
「そう、ですか……なら、ライバルとしてこれからよろしくお願いしますね?」
言葉が出ない。あんまりにも予想外過ぎて……
俺は君達にとっては裏切者なのに、そんな言葉が何で出てくる?
衝撃からの戸惑い、そして思考が止まる。そんな俺を再起動できたのは、藤原さんが肩に触れてくれたからだ。
「どうしました?」
「いや、なに……何でもないよ」
言葉を濁して、表情を作った。
「ライバルとして共に切磋琢磨しましょう! それでは準備がありますので後程……」
藤原さんを連れて、それこそ逃げるようにその場から離れる。
事実、準備に時間が必要なのは本当だし、挨拶するのが目的だったのは本当。その場を立ち去るのに理由としては十分だ……
だが、こればかりは気持ちの問題だな。
「……よくよく考えてみれば、私達はお互の事をよく知りませんね」
自分達の控え室に向かう途中で藤原さんがそう呟く。
「そうだね、でも俺は君のことをよく知ってるつもりだよ?」
そう切り返す。少なくとも事務所の誰よりも彼女を理解してるつもりだ。
おじいちゃん子な所とか、揺るがない芯がある所とか、最近はオシャレを頑張ってる所とか……でも、そんな事を言いたい訳でもないのだろう。
「そうですね、ならば知らないのは私だけ……良ければ憂いの原因を聞かせてください、解決は無理でも和らげることは可能かも知れませんから」
「聞いても面白くない話だ……でも、今後の俺達にも関わることだし、聞いておいてくれ……そして軽蔑したならば、すぐに俺は担当を降りるよ……」
いつか話す予定だったが、今話すべきかも分からないが……それでも話そう。ポツリポツリと。
これを物語にしてしまえば、それは余りにも拙く、そして実に船橋縁らしい物語だ。
765プロが今よりも遥かに無名の事務所だった時、その事務所に居たのが高木社長
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