第4話 : 刻星病・中編
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変えようと、本来の目的を促す。
藤原さんも俺の言葉の後に前に出て丁寧にお辞儀した。
「ご紹介に預かりました藤原肇です。本日は先輩の胸を借りて精一杯お相手を勤めさてもらいま─────」
「てい!」
「きゃ!なにするですか!??」
余りにも硬いセリフなので、一先ず軽く藤原さんにチョップを入れてキャンセルを入れた。
そして何よりも胸を借りて戦う?君はそんなタイプではないだろ?
「藤原さん?格上だからと言って必要以上に偽る必要はない……ましてや相手は765だ、ありのままの君の言葉を伝えなよ?」
噛んで含ませるようにゆっくりと言い聞かせる。どうにも朝から浮わついてると言うか、そわそわしている。大舞台は今回が初めてだから仕方がないか。でも、俺は彼女に自分らしさだけは失って欲しくはない。
「私は……そうですね。私はただ全力を尽くすだけです」
より強い瞳をして控え室の奥に視線を向ける。星井美希や律子の更に奥に居る対戦相手に。
「このフェスに抱く勝利のイメージ、それを本物にして見せます!」
それは聞いてしまえば、ただの勝利する宣言だろう。
でも、いつだって藤原肇の最大の敵は己だ。外敵ではなく内敵……自身のイメージが何よりも越えるべき壁なのだ。
そしてそのイメージは対戦相手が強ければ強い程に高い壁となって立ちはだかる。それでも藤原肇は口にする。
「ですから……どうか、全力でお相手願いします!」
手を抜くなと。格上相手に全力を希望する。
律子は唖然とする。それはそうだ、実力はともかく立場も肩書きも下ならば、初めからこのフェスは不利だ。それでも、己の不利を知っても相手に全力を心から希望するなど、いったいどれだけの人間が口にできるのだろうか?
だけど、星井美希は笑わない。遥か格上の彼女もきっとこんな道を辿って今の地位にまで登って来たのだろう。
「あはっ☆確かにこれなら、近いうちにミキ達のライバルになるかもなの!」
「当然だ。俺の自慢のアイドルなんだから!」
『でもね』と星井美希は言葉を続ける。
「それでもミキ達の後輩は簡単には負けないよ?シアター組の皆はミキ達の自慢の後輩なの!」
その鼓舞は控え室奥のアイドルにも届く。その言葉を噛み締めるように数回頷いて。今回の対戦相手はこちらに来た。
「本日の対戦相手の最上 静香です。先輩の激励と言葉に恥じないステージをするつもりです……どうか、お互いに全力を!」
思わず君も硬いな……とツッコミ入れそうになったが。それでも流石に765だ、素敵なアイドルが育って居るようだな。
タイプ的には藤原さんと似たような感じだな。
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