第3話 : 刻星病・前編
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先輩に追い付き、掴んで、引き離さなければいけないのだから……
「ふぅ……今更だが、このアイドルランクってのは必要なのかねぇ……知らない人に先入観を植え付ける可能性があると思うが……」
アイドルが実力で勝ち取ったランクだけど、それが=価値観に変わってしまったのは嘆かわしい事だ。
まぁグダグダ言っても仕方ないし、シャワーでも浴びようかな、そろそろアイドルも出社する時間帯だし、汗の臭いを撒き散らすのもアウトだろう。
シャワー室に移動した時、洗面所の鏡に映った自分の顔を見てギョッとした。
目の下のクマは仕方ないのだが……その瞳は鈍く黒ずんでた……所謂ヤンデレの目だ。
思ってた以上に集中を使い過ぎたようだ……
先天性・集中力自己支配。その最も危険なリスク……それは人間性の自覚無き欠如だ。ある一定の集中を越えると、人間よりも効率を上位に置いてしまう。
……こうなると、人間がその辺の石ころと同じ存在価値しか無くなってしまうのだ……それは後天的な精神異常者となる意味合いでもある。
「それは嫌だな……」
幼い頃……まだコントロールが不完全なために、俺は半ばサイコパスとなっていた。
人の気持ちが分からない、善意の欠如した善意を持つ人間……
父親のミスをワザワザ掘り返して、手直しして公表した……悪意なんてない純粋な気持ちでだ……
だが、現実は父親として、一族の代表としての顔を潰したのだ……倍以上年の離れた子供に、プライドも立場も叩き壊されて、冷静で居ろとは誰も言えないだろうな……父親から絶縁されたのも仕方ない事だ。そうでなければ、効率が良いからと、父親を失脚させて一族を乗っ取るぐらいはしただろう。
もしも……あのまま“星”に出会わなければ、この胸にあの光を刻まなければ……俺はそんな化物になっていたのかも知れない……
***
心さめざめと、集中のし過ぎで冷たく凍る。
それは深い海の底に沈んで行く感覚と言えよう……
だんだんと暗く、深く、冷たく、闇に飲まれる感覚……
2代目シンデレラの神崎 蘭子のように、『闇に飲まれよっ!』って軽く言えるのならばどれだけ楽か。
では、そんな時はどうすか?
“星”を思い返す。それだけで良い……
それだけで胸に温かみが広がるから。
海の底は、地球で最も宇宙に近い環境だとも言われている。なら、集中して深く沈んだ底は暗い暗い宇宙の中なのだろう。
だから“星”を明かりに、“星”を導に、俺は人間に帰ろうと暗い海の底から浮上する。
“星”が一つ。
“星”が二つ。
“星”が三つ。
今まで出会った女の子を思い浮かべて、心に暖を取る。
洗面所の鏡
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