暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第三十三層 ゼンマイを孕んだ魔女
片手斧の少女 その壱
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憶を引き合いに出すと今回のクエストにはできれば連れていきたくないぐらいだ。しかし。

「メントレのほうが結構優秀だからな……」
「はい。それを踏まえての推薦です」

 そう言ってアスナはウィンドウの一つを可視化しこちらに示す。それは先ほどヒースクリフが送ったメールの内容だった。内容の一部にはこう書かれている。

『今回クエストに参戦するNPCの魔法使い≪メントレ・マジーア≫は非常に優秀なサポーターだ。自然治癒力を大きく上げ、攻撃力と防御力を僅かに上げる常時発動(パッシブ)オーラを持っている。スバルくんによる思考実験の結果、メントレを除く五人での戦闘でも六人以上の成果が出せる可能性が高いとのことだ。攻略不可と言わせるほどの高難易度クエストに対する救済措置のNPCといったところだろう』

 以上、メールタイトル≪墓塔クエスト公開情報 Vol.4≫より。どんだけ送ってるんだ。

「ま、スタンドプレー中心が作戦の核で組み立てているから通常のパーティーよりはイルもしやすいだろ。なんとかなるだろ多分」
「そうですか。では連絡を取ってみます」

 そう言ってアスナはウィンドウを開きメールを打ち込み始めた。あとは返事と到着を待つだけだから、またもや暇になってしまった。俺は席を立ち、アイとメントレに向けて言った。

「ポーカーしようぜ。トランプ持ってきてるんだろ?」
「いいけど、また貴方が負けると思うわよ」
「まだまだ。最終的に勝率が五割以上になればいいんだよ」

 メントレがアイの隣から身を乗り出して尋ねる。やや俺の誘いに乗り気なように見える。

「へー、じゃあスバルさんは今んところ何戦何勝なんですか?」
「三十二戦八勝二十四敗。総被害額132400コルなーり」
「ア、アタシはパスで……」

 それから十分後、俺の手持ちコインの底が見えてきた頃、やっとイルがやってきてくれた。三十三戦八勝二十五敗。遂に勝率二十五パーセントを切ってしまった。到着したイルの第一声は強い疑問符を持っており、アイに向けての言葉だった。

「なにそのコインタワー?」
「ん、これは一枚100コルのゲームコインよ。だからしめて9700コルね」
「え? 何? スバルくん滅茶苦茶負けてんじゃんさ。だっさー。アハハハ!」

 快活なイルの笑い声を聞き流しながら、俺は手持ちのコインを数えた。あと三枚で持ち金300コルであった。ここの飯代を払えるかすら怪しいレベルだ。俺は交換も済ませていない手札を捨て、イルに向きなおった。相変わらずな姿であった。

 短い黒髪に黒い目、顔つきはややシャープでいながらも表情はやんちゃっ子のものだ。フード付きのジャケットをおざなりに羽織り、その内側はヘソを出すようなインナー。腰に下げられた斧用のホルスターの中には、黒と
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