≪アインクラッド篇≫
第三十三層 ゼンマイを孕んだ魔女
片手斧の少女 その壱
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回生の一手だったのならいいのだが、イルのセンスは違う。センスが悪いのではなく、センスのベクトルが壊滅的に違う。
まず指示系統を壊滅的に破壊する。単独行動、無駄行動。個人単位で見ればそりゃあ利益はでるんだろうが、彼女がリーダーだったり、かなり小規模なパーティーなら成功しやすいんだろうが、フルパーティー六人以上となると完全に駄目になる。
表現に難しいが、ソロプレイヤーは多かれ少なかれそういった非協調性というものがある。≪黒の剣士≫キリトなんてのもその一人だが(何故かいつもラストヒットを掻っ攫う)彼女の場合それを極端に≪多かれ≫に振った人物と言えよう。なんと言ってもヤバいのが、キリトだとか他のソロならなんとかレイド戦で戦えるように集団戦のイロハを教えられる俺なのだが、彼女だけには教えることが出来なかった。教えてみれば理解はするのだが、何故か実践できない。
彼女の参加したレイド戦なんて俺と他四人のパーティーメンバーがひいこら言いながら彼女を嗜めたりカバーしたりと大忙しだった。もしあの破滅的集団戦闘センスが周囲にも波及していたらと思うとゾッとする。
彼女の名誉のために補足すると≪戦闘≫センス自体は悪くない。むしろソロプレイヤーの中では結構な腕前だ。ただ……邪道? なのだ。性格は明るく快活だし、俺やアイも含めて彼女は結構友達が多いらしいのだから、人間性うんぬんじゃなくこう、なんというか、≪集団戦闘≫のセンスがないだけなのだ。
救いなのは、彼女がそれを自覚してくれてフロアボスとのレイド戦に一度こっきりでもう参加していないことだろう。俺が「なんでそういった配慮は出来るのに俺の指示を聞かないんだ?」と質問したところ「指示ちゃんと聞いてるよ」と返してきた。聞いているつもりらしい。聞いているつもりなのに大惨事だから彼女からしてみれば反省の余地がないのかもしれない。
そこまで壊滅的なセンスの持ち主の名前を名簿で目にした時、結構驚いた。ギルドに入ったという噂は聞いていたがそれが本当だとは微塵も思わなかった。思わないなんてものじゃない。初めて噂を聞いたときは矛盾の例文になるな、とほくそ笑んだものだ。
一体全体どうやって≪ポジティブじゃじゃ馬サラブレッドちゃん≫を乗りこなしたんだろうか。というよりも本当に乗りこなしているのだろうか。それも問いただせば分かることだ。
「イルはパーティープレイに向かなかったと思うけど?」
「確かに加入当初は集団行動が苦手でした。ですが今は……それなりに出来るようになりました」
「どのくらい?」
「……」
「現在では、リーダー職以外では、どれくらいの腕前なんだ?」
「せ、成功例は今のところ……五人パーティーまでです」
「五人……」
難易度を考えると採用するかどうかは悩める。個人的な記
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