第八十一話
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朽ち果てたショッピングモールでの戦いを終えた俺は、再び総督府の内部へと戻ってきていた。まだ他のEブロックでの戦いが終わっていないらしく、次の試合が始まるまではこの総督府の中で休憩でもする仕組みのようだ。電光掲示板に表示されている、他の出場者の戦いぶりを見ながら、俺は飲み物を注文すべくカウンターへと向かった。
「あら、早いのね」
出来るだけ空いているカウンターへと足を延ばしてみると、何やら緑色をした飲み物を持った先客――シノンがいた。……なるほど、他の客は遠巻きにこちらを見てくるのみで、どうやらこの水色の髪の少女も、他のプレイヤーからの注目株といったところなのか。
「ああ……さっきはキリトがすまなかった」
「……別にいいわよ、気にしてないし。それに、あんたが謝ることでもないでしょ?」
バーのマスターらしいNPCにコーヒー頼みながら、先の非礼を謝りつつシノンの隣に座る。そうしているうちにすぐさまコーヒーが用意され、一口飲んでみるとあまり美味しくなく閉口する。
「ここのコーヒー、ただの泥水よ」
「……先に言って欲しかったな……」
『泥水』の発言に反応してか、マスターNPCが顔をしかめる。一息落ち着いて、もう一度電光掲示板をゆっくり見るものの……キリトとリーベの姿はどこにもない。もう終わってしまったのか、それとも画面に映っていないだけか。
「あなたの試合見せてもらったけど……なかなか良い銃使ってるのね」
やはり美味くないコーヒーを顔をしかめながら飲んでいくと、同じく電光掲示板を見ていたシノンから声をかけられる。しっかりと見られていたかと思うと気恥ずかしいが、それ以上に目の前のシノンの腕前に舌を巻く。……俺の戦いを余裕を持って見ているとは、彼女はどれだけ早く対戦相手を撃ち殺したのか、ということだ。わざわざ俺の試合を見るために、急いでこのバーに来るわけでもなし、まさしく一瞬で終わらせてきたのだろう。
「でも、それだけじゃこの大会は勝ち抜けないわよ。棒立ちで強い銃を撃ってるだけじゃね」
「…………」
――シノンの指摘はまさしく的を射ていた。今回の戦いは、対戦相手であるザビーの戦い方と、偶然AA−12が相性が良かったということだけだ。あれでザビーが室内での戦いに持ち込むことなく、室外での撃ち合いを選択していれば、俺は勝てていたかどうか分からない。
「その顔を見る限り、分かってはいるみたいだけど。まあ、せいぜい頑張りなさい」
それだけ言うと、シノンは飲み終えたコップをバーのマスターに返し、こちらを振り向くことなく去っていく。彼女も次の試合の準備があるのだろう。美味くないコーヒーを一気に飲み干すと、同じくバーのマスターに返して立ち上がる。
……刀のないこの世界で、俺に
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