向日葵
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「あっつい・・・」
炎天下。茹だるような暑さと、じりじりと照らす太陽に目を細めながら、私は大きく息を吐いた。アスファルトからの照り返しが、余計に体力を奪っていく。
今は夏休み真っ最中で、はっきり言って家を出る理由さえみつからない。だけど、特にすることがないから仕方がないと家を出た。早速選択を間違ったかもしれない。
「絶対溶けるって、何この暑さ〜・・・」
うだうだ言っていても暑いのは変わらない、そう考え、早足で近くにあるコンビニへ向かった。一歩中に入ると、ひんやりとした空気が全身を襲う。少し寒いと感じるくらいの温度は、暑い中歩いてきた私には丁度いい。
店員の愛想のいい挨拶を聞き流して、アイスの売り場へと足を進める。甘いものは好きだ、疲れがとれる感じがして、子役時代も好んで食べていた。
「あ、」
懐かしく苦々しい過去を思い出していると、ふと鮮やかな赤が目に付いた。太陽よりも赤く、それでいて一切の暑苦しさを感じさせない彼は。
「カルマ君?」
控えめに呼べば、こちらに向けられる蜂蜜色の双眸。整った顔は、いつもの飄々とした感じじゃなくて、すこし戸惑ったようなビックリしたような心情を浮かべていて、その珍しさにクスッと笑う。一瞬驚いた顔をしたカルマ君は、すぐにいつもの彼へと戻った。少し残念。
「茅野ちゃん、あー久しぶり?」
「ふふっ何で疑問形?うん、久しぶり!」
謎の挨拶にまた笑いを零せば、照れたように微笑むカルマ君。また珍しい表情を発見しちゃった。
「いや、この場合何て言ったらいいかわかんなくて、久しぶりとは違う気がしたし」
「そう?夏休みはいってから初めてあったし、久しぶりで良いと思いまーす!」
「どうしたの?そのテンション、あれ、いつもだっけwww」
「ちっ、違うよ!普段はもっと落ち着いてるよ!暑さでハイになってるだけだもん!」
「はいはい、そういうことにしといてあげる」
「何それーっ!!」
むぅと頬を膨らませて睨むと、カルマ君は「ごめんごめん」と言って、楽しそうに頭を撫でてくる。不本意極まりないけど、いつもより楽しそうなカルマ君を前にしたらなにも言えなくなった。なんだかんだで、私は彼に甘いらしい。
そんないつもと違った楽しい夏の日。
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