第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
素人風という名のプロの演技
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道やってましたという雰囲気の坊主頭の男子たちは男子たちで集まり、運動部でない生徒たちは生徒たちで同じ臭いでも感じたのか、類は友を呼び集めて同性だけのグループができ、今はまだ対立構図こそないものの、スクールカーストの階層にそれぞれ分類されていた。
――そしてそんな学校の1階。1年C組の教室の窓側最後尾。
古今東西いくつものアニメや漫画におけるクールでシニカルでブレないダウナー系主人公にとって定番のはずの席に、朝からパラフィリア予備軍とごく普通に会話をこなし、通学途中の商店街で桜鯛を取り置きしてきた、海外のゲーマーからも知られるイラストレーターにしてergの原画家・グラフィッカーの肩書きを隠し持っている少女は腰を下ろした。
珠希の苗字上、五十音順で席を埋めていくと「わ行」の生徒がいない限り、いつも窓際最後尾かそのひとつ前というのが定番だ。この時期、心底「わ行」の姓の人口動態を疑うのと同じように。
だが、そんなことで疑われる「る」以降の姓を持つ人々の困惑など我関せずなこの少女、クールな雰囲気こそあれ、それは初対面の人間相手には基本的に小心者なことを悟られないようポーカーフェイスをしているだけであり、責任や義務とは無縁でありたい反面、一度背負わされた信頼や期待に関しては120%の本気と努力で返す熱情を秘めている。
………………のだが、
「……やっぱり、こうなるんだよねぇ」
就学の心得などを聞かされた始業式を含めて今日で一週間が経ち、同じ中学出身の生徒が誰一人としていないクラス内で珠希は見事に“ぼっち”になっていた。
「人を寄せ付けない美貌」という表現はこの少女のためにあるといっても過言ではないのだが、中学以降、クラスメートに顔見知りがいなくなるか、積極的に声をかけてくる生徒がいないと毎年こうなる珠希の情状も少しは酌量してほしい。
中学の学校祭で歴代最多の『他校生からナンパされまくった女子』という嬉しくもない記録を持つ珠希の逸話を噂程度に知っている男子もいるようだが、8割の脚色と1割の誤解が混じった噂が原因で完全にどうしてもお近づきになれない高嶺のフラワー扱いだった。一部少数の見解をもってすれば、そのフラワーは棘がついた薔薇であったが。
そもそも学祭でナンパされたのは珠希だけではなく、珠希と行動をともにしていた三人の友人たちもだ。それどころか三人それぞれが珠希に引けを取らない強烈な個性の持ち主で、外見のレベルも珠希と同等(*注:ここだけ珠希談)だったことはさておき――。
「……うん。何となくわかってた。わかってたんだ……」
誰にも聞かれないよう小声でボヤくこの現状、ほんの数日前に『普通』になると心に決めた珠希にとってこれはスタートダッシュから見事に躓いたことになる。カレシ
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