第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
素人風という名のプロの演技
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うよう土台となるテンプレートに自身の持ち味と変化をつけていくところからスタートし、後はシナリオライターやディレクターらとの折衝の繰り返しが始まる。
決して、珠希がまだ処女であることがいけないということを邪推してはいけない。
「……と、とにかく、母屋のほうは誰もいないんだからね? 鍵も全部かけてきたから、あとは離れで勝手にやっといて」
「はぁ〜い」
「あ、汐里さんとレズるのだけは禁止」
「ぅええぇぇぇ〜っ!?」
勝手にやれと言いつつも禁則事項を作ってきた娘を前に、母は心底残念な声を漏らして唇を尖らせる。その仕草は本気で小学生のそれと全く同じだった。
「……お腹空いたらどうすんの?」
「お昼食べる〜。今日は珠希ちゃんの炒飯が食べたいなぁ」
「いやいや、あたしいないから。今日これから学校だから」
大丈夫かこの母親は?
一応尋ねてはみたものの、自分の職業上必要な事柄や興味あるものに関しての知識量は人並み以上ながらやはり頭のネジが何本か紛失している彩姫は、離れの中に備えつけられている簡易キッチンにある冷蔵庫の中に昼食として用意されたサンドイッチの存在を忘れていた。
あれほど作った珠希が何度も、冷蔵庫に入れておくからお昼に食べるよう言ったというのに。
「………………行ってきます」
――大丈夫なはず。三日くらい何も食べなくても人は生きていけるんだし。自身の経験からも今はそう信じるしかない。
ガスコンロの扱いすら間違えるおそれがある母親を前に、この状況で自分にそう言い聞かせるしかない現実に朝からK.O.されそうになるのをぐっと堪え、それ以上の彩姫の言葉を一切受け付けず、珠希はバッグを肩から提げると離れの玄関を出た。
☆ ☆ ☆
今年から珠希が通う高校は歩いて30分ほどの距離にある。
家を出て、住宅街をから駅前まで続く小さなアーケードの商店街を抜けて、駅構内を南口から北口へ抜け、中心繁華街を脇目に見つつ、なだらかな丘陵地を上ると校舎が見えてくる。
しかしその30分ほどの通学距離を往復する間、特にアーケードの商店街では珠希に様々な声がかかる。
「おう、珠希ちゃん。今日は学校かい?」
「おじさん。今日、平日だよ?」
「んん? ……ああ、そうだったなぁ」
「あら珠希ちゃん。おはようさん」
「おはよう、おばちゃん」
真っ先に声をかけてきたのは八百屋のおじさんおばさん夫婦。
おじさんのほうは威勢のいい商売人気質だが、あまり調子に乗りすぎたり、熱が入りすぎたりして本業のほうが疎かになることがある。すると店の奥からおばさんが現れ、物理的かつ精神的にシメられるのだが、その一連の流れは珠希を含む常連の奥様方にとっ
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