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竜門珠希は『普通』になれない
第1章:ぼっちな姫は逆ハーレムの女王になる
素人風という名のプロの演技
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ごとく背筋をぴんと伸ばして答えた。
 だが、この精神年齢の幼い母がそこまで断言したとなると、今の会話で本当に夫婦間の営みすら終了させてしまう気がした娘は、両親がここでレスになるほうが問題だと即座に計算し、譲歩の姿勢を見せる。

「言っとくけど、常識的な範囲でならいいんだからね?」
「常識的っていうとぉ、AF?」
「っ!? それは……っ、……まだ許す」

 いきなり後ろ(・・)の話か、と軽く驚いた珠希だが、このとき珠希は重大なミスを犯した。決して忘れていたというわけではないが、作品内における描写の緻密さ・濃厚さと普段の精神的幼さのギャップがあるものの、今珠希が対峙している母親は性的な行為・知識なら一般人より詳しい官能小説家(プロフェッショナル)であることを。

「それじゃあ、露出や窃視やスワッピングは?」
「は? ……え? ろ、しゅ……? せ、窃視って何?」
「とりあえず、珠希ちゃんの言葉的にはアダルトビデオ的に許せる内容だったらOKってことでいいのかなぁ? ……あっ! そうなるとコスプレとBDSMは基本だよね。ネタなら露出と窃視と疑似近親とぉ、あ、素人風ハ○撮り、○交と実録風(・・・)盗撮モノもかな?」
「いやいやいや……。疑似とか素人風とか、めっちゃユーザーの夢壊しまくってるし」

 この竜門家唯一ともいえる常識人(でも野球バカ)の聖斗や、三次元(リアル)の性的な話はスルー対象な結月がいれば、母と長女の朝から濃密にアダルティな会話に「ツッコミどころそこじゃねーし!」と言って制止してくれるのだが、この時間、既に二人は制服を着て中学校に向かってしまっていた。

「えぇーっ? だって大抵が演技(それ)フェイク(あれ)だもん」
「知らないよ。あたしそんな経験ねーですもん」
「……珠希ちゃん。それはerg原画家としてどうかと思うよ?」
「え? なんで今の流れであたしが非難されるわけ? あと今はもうerg以外にもイラスト描いてるから! むしろerg以外の仕事のほうが多いから!」

 別にAV女優の性的絶頂に際しての言動が演技かどうかを区別できなくても、ergの原画家として致命的にはならない。あちらはあくまで一連の動画であって、こちらは差分こそあれ基本的に一枚のイラストまたはカットで勝負する静画の世界である。ゆえに一人でも多くのユーザーの印象に残る――砕けた言い方をすれば、思い出しただけで×××が××して思わず××ってしまうようなイラストを一枚でも多く生み出せればいい。

 そもそも表情、ポージング、構図においても基本的なテンプレートがいくつかあり、珠希はそれを複数組み合わせて、目新しいものに見せかけているだけだ。ましてやイベント原画はイベントシナリオが完成していなければ手が付けられない以上、シナリオの内容に沿
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