第百十六話
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。私にとっては、神代家にとって、正論なんて価値もない!
「私は神代アテだ!神代が守るのは自らを含めた神代!狂気に壊れてやるつもりは無いッ!」
そう断言して、私は歯を食いしばり、自分の体を抱きしめ、身を丸める。自然と体から漏れ出ていこうとする狂気を、戦いの中で私が生み出し続け、今も体の中に残っている狂気を押しとどめる。
その濃度に、今にも狂いそうになる。自らにささやきかける声に、身をゆだねそうになる。今すぐにまき散らして、終わらせてしまいたくなる。けど、やらない。そんなことはしてたまるか。だって、それをしなければまた狂ってしまう。また狂気に溺れ、身をゆだねてしまう。
口から漏れそうになる苦悶の声も抑え、体に突き立てている爪の痛みに少しでも意識を向けて、この場に渦巻く狂気もどうにか体に引きずり込んで、抑えようとする。ああでも、もう・・・
「アテ!」
心が折れそうになったその瞬間。私は後ろから抱きしめられた。声もその腕も、すべて覚えている。この体が知っている。恋に落ちたその相手のことを、私という存在の全てが覚えている。
「むそう・・・」
ああ、そうか。権能の持ち主自体が倒されたから、武双のもつ神殺しとしての抵抗力が勝ったんだ。それで、ここに来てくれた。私のもとに駆け付けてくれた。
「堪えるな!んなことしてる間にアテが壊れる!」
武双はそう言いますが、私はただ首を振ります。確かに堪え続ければ壊れる可能性が高い。それでも、このまま周囲にふりまいていてはその快感に飲まれてしまう。
それを伝えることはできない。でも、武双はどうやってか私の言いたいことを理解してくれたようで、いったん抑えるためにブレスレットを付けます。が、一瞬で砕ける。
今の私は、アテという女神の力がほぼフルに出てきています。それを抑えるのは難しい。この狂気だけでもどうにかしないと、まず無理です。
「ああクソ、なら・・・」
それがきかないことが分かると、武双は私の体の向きを変えて、真正面から見て。
「狂気全部、俺にぶつけろ!まつろわぬ神が目の前にいる今なら、なんとでもなる!」
そう、言ってきます。正直、それをただ信じることはできません。私の狂気が今どれほどになっているのかは理解していますし、武双の持つ権能も多くは鋼の神から簒奪したもの。私との相性は、すこぶる悪い。
でも、それでも・・・
「・・・ごめ、ん」
「謝るなよ、家族だろ?遠慮なく頼れ」
「うん・・・」
どうしても、頼ってしまう。
目の前の武双に唇をかさねて、そのまま溜まりに溜まった狂気を流し込んだ。こんな状況なのに、武双とキスしていることに幸せを感じてしまう自分が、この上なく嫌だ。
ただキスしただ
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