第百十六話
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た。この上なく強く狂わされた空気は衝撃の進む方向をすらずらし、ベクトルが狂ったかのような結果をもたらした。
当然、こんな方法は必ず成功するようなものではない。狂っただけなのだからどこに向かうことになるのかなんてわかるはずもなく、もしかするとただ威力だけを増して自分に向かってくることすらあるのだ。にもかかわらず実行するその考えは、確かに神殺しのものに近いかもしれない。
「何、そもそも槍の使い方も弟より学んだもの。人の中で暮らしていくうちに、自然と向上心も身についたものよ」
「さすが、二年間も人間と暮らしてきただけはあるな・・・!」
もちろん、ただ人間と共に暮らしただけではこんな技術も考え方も身につかない。その家族の中に神殺しがいて、その者と手合わせをしたりともに権能の使い方を考えたりしたからこその技術だ。
「して?まだ何か策はあるのか、神殺し?」
「何やっても狂わせてくるくせに、よくもまあ言ってくれたもんだなぁ!」
「それは早計であろう。妾は外側にかけられたものしか狂わせておらんぞ?つまり、そういうことかもしれんのう?」
「だからこの組み合わせなんだろうがッ!」
そう言う神殺しが用いているのは、自身の強化である巨人か丸太の化身しか用いていない。たまにルサルカから簒奪した権能で水を出して蒸発させ、車輪を放ったりもするのだが、その尽くがアテによって破壊されているのだから他の手を取ることも難しい。
より一層本質に近づき、最源流の鋼すらをも狂わせる狂気の体現者となったアテ。その存在はただただ『狂わせる』という一点のみの力であるがために、だからこそ多くの神、神殺しにとっての脅威となっている。
「ああクソ、クソッタレ・・・!」
「ほうら、隙だらけだ」
一言つぶやいた瞬間に、踏み込んで懐に入る。そしてその体に触れ。
「『狂え』」
たった一言。だがその一言だけで、九人目の持つルサルカの権能は狂った。
返す手で背に触れて再びやろうとしたものの、瞬時に神速の権能を使ったことで逃れる。
「惜しいところであった。あと一歩だったのだがな」
「惜しいじゃねえぞ、このヤロウ・・・」
「女神に対してヤロウはないであろうに、失礼な」
「神殺しをするような奴が、神への礼儀なんざ知るかってんだ」
「そうでもないぞ?武双は少なくとも、初対面の妾には礼儀正しかったのだがな?」
「んなもん、特殊な例だろ!」
はて、魔術に関わるものであれば普通の反応だと思うのだが。
しかしそんなことはこの場では関係ない。次のチャンスを狙うアテは槍をより防御に特化した形で構え、九人目は素人丸出しでありながら有効な構えをとった。そして、本能的に理解する。今目の前にいる女神は、どこが最も厄介なのかを。
普通であれば、女
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