Taromati
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バイオリンのお稽古が終わり、いつもの席に座ると、ドアが空いたので振り返る。
銀の髪の毛に赤い瞳の美少女と尻尾の先と足と耳と鼻が白い黒猫のお客様。
「いらっしゃいませ」
「カルヴァドスのロックと黒龍のしずくをお皿に」
そう言って大きいテーブルに腰を下ろす。
お皿にってのが気になったんだけど、あんまりジロジロ見るわけにもいかないから、
視線をカウンターに戻すと、んごーが唸ってる。
「黒龍を頼むとはなかなの飲み手やな」
「そんなにすごいの?」
「日本酒の中では、最高峰の部類やしな」
さすが日本酒好きのんごー、銘柄にも詳しいみたい。
このお店に来るくらいだから、たぶんあの美少女も見た目通りの年齢じゃないんだよね。
「記者なら戦場に行っても無事に帰れると思い込んでいたのでしょうか」
「記者が来て喜ぶのはテロリストぐらいだしな」
耳に飛び込んできた会話に、ちょっとびっくりする。しゃべる猫なんて初めて。
ただの黒猫じゃなかったんだ‥‥
ということは、お皿のお酒は猫用ってことだよね?
飛白はそれを知っていたのか、ガラスのお皿に並々とお酒を注いでいる。
目を輝かせるんごーの頭を、裏子ががしっと捕まえている。
つまみ食いならぬ、ぬすみ飲みを阻止してるらしい。
「ちょっとくらいええやんか〜」
そんなんごーの声を無視して、裏子は2つのグラス(?)を
さっさとテーブルに運んでいった。
こういう時だけ、飛白と裏子は抜群のコンビネーションを発揮するのね。
「オーナーに飲まれちゃ、黒龍がかわいそうだからね」
なんて、さらりとひどい事を言う飛白。
いつも思うんだけど、飛白のんごーに対する扱いはオーナーに対するものじゃないよね。
なんというか、おもしろいオモチャ?みたいな感じ。
「神はぐっすり眠っているアダムのあばら骨を一本とって、一人の女を創る事にしました」
「………」
「ドシュッ!ブチブチブチ…ゴキッ!」
「ちょっと待て」
聞こえてくる会話が、不穏なんだけどおもしろくて、つい聞き耳を立てちゃう。
私もその他大勢の日本人と同じく、あんまり神様って信じてないから、
神話の話をこういうふうに面白おかしくしゃべられちゃうと、笑っちゃいそうで困る。
ふと見ると飛白も今の話はツボだったのか、後ろを向いて肩を震わせている。
イギリス育ちだったら、プロテスタントの環境だよね。
まあ、ヴァンパイアなんだから、そのへんあまり関係ないのかもしんない。
んごーと裏子はこういう会話に興味がないのか、ごく普通に聞き流してるよね。
2人はいつもどおりに、お店の売上とかゲテモノの話をしてる。
「嫌いな曲を聞かせ続けて自我を崩壊させる、ですか……斗和は嫌いな曲って何ですか?」
「
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