第二十一夜「地上の星座」
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真夜中三時。俺は家を出て、使い古した軽自動車に乗り込みエンジンをかけた。
俺は仕事や私生活で嫌なことがあると、気晴らしにドライブに出る。それも決まって真夜中にだ。
その理由として、真夜中だとあまり車が走っていないということが挙げられる。
ここは田舎街。都会とは違い、昼間でも大して交通量が多いというわけではないが、朝夕の通勤ラッシュ以外は閑散としてるのが実状だ。
俺はそんな閑散とした路を、誰にも邪魔されることなく走るのが好きなんだ。とは言っても、別に走り屋じゃない。ただ、ゆっくりと自分のペースで走りたいだけだ。
道路の周辺は田畑が大半を占め、閑な田舎街の代名詞みたいなところだが、そこへ空に瞬く星や、優しい光を注ぐ大きな月が加わると、まるでお伽噺のイメージそのものになる。俺はそんな自分の住む町が好きなんだ。
暫く夜道に車を走らせると、夜でも車の多い道に出た。一応国道だし、それなりには真夜中でも交通量がある。
その国道の一角に、この町唯一のコンビニがあった。普段はあまり使わないが、たまには入ってみようと車を駐車場へと入れた。
「何か買ってくかなぁ…。」
エンジンを切りつつ呟いた。そうして車から下り、コンビニの入り口へと向かった。
外の風は冷たく、口から出る息が微かに白く濁る。
「春近し…だが、まだまだだな…。」
呟く声さえ、音が凝固したかの様に白く舞った。
コンビニに入ると、そこには店員であろう男性が一人、レジの中で仕事をしていた。
俺が入って行くと、直ぐにこっちを向いて声を掛けてきた。
「いらっしゃ…あ、克巳じゃないか!」
いきなりそう言われ、俺は面食らった。
よく見ると、そこで働いていたのは高校の時の同級生だったのだ。
「征司!何お前、ここで働いてたのか?」
俺は古い友人に言った。
「ああ、つい二週間前にオーナーになったんだ。」
「お前がコンビニのオーナー?何かの間違いじゃないのか?」
「失敬な奴だな…。」
征司とは八年程会ってはなかった。彼はここを出て、ずっと千葉の工場へ働きに行ってたのだ。
聞けば、そこで金を貯め後、向こうでオーナー研修を受けてからこちらへ戻ったという。
「ま、お前も色々と苦労してんだな…。」
「で、克巳は何してんだよ。」
「俺は近くの会社で働いてるよ。一応は係長だがな…。」
そうやって他愛もない話をしていると、他の客が入ってきた。俺は征司の邪魔にならない様に、話を切り上げて商品を見て回った。
以前来た時は乱雑で埃を被っていた商品達が、理路整然と並び変えられて棚も綺麗に掃除されていた。何とも征司のやつらしい。
まぁ、これが普通なんだけどさ…。
俺はその中から、缶コーヒーを二本と煙草を二箱を買い、征司とはまた会う約束をして
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