第二十一夜「地上の星座」
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外へと出たのだった。
人間も風景も変化してゆく。住み続け、何もなく何も変わりはしないと思っていても、緩やかに全ては変化してゆくものなのだ。一つとして同じ日はやってこない。
俺はそんなことを考えつつ車を出したのだった。
これと言ってあてなど無いドライブなのだが、一ヶ所だけ行くべき場所があった。
何かを考える時、俺はいつもその場所へと向かう。いや…そう言うと語弊があるかも知れない。結局は考えているうちにその場所へと向かってしまう…と言った方が良かったからだ。
俺は本道から脇道へと入り、そのまま真っ直ぐに車を走らせた。その脇道は山へと向かう道で、周りには草木しかない。
以前は隣町への抜け道として活躍していたが、近年完成したトンネルによって、その抜け道としての役割を奪われたのだ。今じゃ一つの田舎道として細々と使われている程度だった。
無論、こんな真夜中に走っている車は一台もなかった。トラックすら本道たる国道を通った方が断然早いため、こちらの道は俺にとって唯一ドライブを楽しめる道となっているのだ。
「前は…真夜中でもかなり走ってたんだがな…。」
車の中で一人呟いた。途中からラジオをつけてそれとなく聴いていたが、何の番組なのか昔の流行歌ばかりをピックアップして流していた。俺は別にそれがどうとは言わないが、どことなくこの道を回想している感じがして局を変えることにした。
だが今度は、もっと古い音楽がスピーカーから流れてきたのだった。クラシックだ。
「只今の曲は、ヘンデルのオルガン協奏曲作品7-2でした。リクエストを下さった…」
どうやらリクエスト番組のようで、アナウンサーがリクエストを出した人の手紙を読み上げている。
「ま、こう言うのもありかな…。」
苦笑いしつつそう言うと、俺はいつも停めている場所へと車を停車させた。
そこはカーブの一角にある場所で、普通乗用車なら三台は楽に停められる。そして俺は車から下り、ガードレールの方へと歩み寄ったのだった。
すると、そこから町の明かりがはっきりと見てとれた。
俺はいつもこの景色を見るために、ここへと来ていたのだ。辛い時や苦しい時、悲しい時や淋しい時…。そこから見る光景は、俺の魂を癒してくれるような気がしていたんだ…。
それは…そう思わせる程の幻想的な光景だった…。
「地上の星座…か…。」
小さな町とは言え、それでもかなりの街灯が立てられている。それだけではなく、色々な明かりがそこには存在しているのだ。
俺は、その一つ一つの光が結び付き、何かしらの物語を紡ぎ出しているようにさえ感じていた…。
元来、俺はそんなにロマンチストじゃない。だが…この光景をみると、まるで夜空の星々が、地上という鏡に反射しているんじゃないかと錯覚さえしていまうのだ。それほどに美
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