第二十夜「必然」
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いたのを今でも覚えてる。
「あ・あの、お久しぶりです。」
彼は私を見るなり、ギクシャクとお辞儀をした。それがあまりにも幼く見えたので、私は笑ってしまった。
「何そんな堅くなってるのよ。」
昔からこんな感じだったわね。全然変わってないわねぇ…。
「ところで、こんなとこで何してんのよ。未だ式も終わってないでしょ?」
私がそう聞くと、彼は暫らく考えてから私に言ってきたのだった。
「あなたを…麻奈さんを待っていました。途中で席を立つのが見えたので…それで。」
「何で…?」
私は首を傾げた。用事があるにせよ、式が終わった後にでも言えばいい。こんなタイミングで話す必要はないわよね?
「えっと…実は、麻奈さんにどうしても伝えたいことがあって…。」
なんだか違う雰囲気。こっちまで堅っ苦しくなっちゃいそう…なんて思ってたら、彼は突拍子もないことを私に告げた。
「僕と結婚を前提にお付き合いして下さい!」
私には何が起こっているのか理解出来なかった。
―この人…今、なんて?―
「サークルで出会って以来、ずっと麻奈さんのことが好きでした。もう見失いたくないって、そう思いました。だから…ずっと、僕と一緒にいて下さい。」
こんな言葉…生まれて初めて聞いたわ…。幻聴じゃ…ないわよね?
彼は返事を待ってるようで、じっと私を見ていた。
私は小さな…それでいて、嬉しい溜め息を初めて吐いた。
「こんな女でいいの?それでも良かったら…いいよ。」
「僕は麻奈さんじゃなきゃダメなんです!!」
彼は興奮気味に大きな声で言うものだから、周囲の人が皆こちらを振り返った。
私は少し恥ずかしかったけど、とても幸福な気持ちになって彼に言ったのだった。
「バカ…。」
これも…必然なのかも知れない。
end...
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