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魔王ナツミの楽園記
始まり
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トソード”を軽く振りながら、あたしは付け加える。
 その気になれば、この剣の一振りだけで町一つを荒野に出来るような特級の危険物。よくもまあこんなものを人の身で作り上げたものだと、本気で感心する。
 とは言え、この世界でそれだけの力は要らない。個人で小国の完全武装の軍隊を圧倒できるって、正直危険過ぎる。

「……そろそろ帰ろっかな」

 ふと気付けば、もう太陽はほとんど山の向こうへと隠れ、空には星が見え始めている。
 また、ただの“橋本夏美”に戻ることを少し億劫に感じながら、あたしはサモナイトソードを体内に入れなおそうとした。

 と、その時。

 ――オォ……ォォオォン

「――!?」

 サモナイトソードからの意図せぬ極光に、あたしは目を瞬かせた。原因は不明だが、どうやらかなりの魔力がサモナイトソードから放出されているらしい。

「何っ、これっ?」

 迸る魔力を探れば、驚くべきことに気づく。
 サモナイトソードが、この世界のものではない何か(・・)とリンクして、勝手に“門”を開こうとしているのだ。それも、かなり無理やり開こうとしているせいか魔力の余波が凄まじい。

「やっ、ばい!」

 それこそ、色んな意味で、だ。
 折角本性を隠してのんべんだらりと生きていたというのに、ここまで派手なことをしてしまえばそれも台無し。その上、このままサモナイトソードが暴走するままに任せていれば、門が開くのと引き換えにここ周辺に相当な被害が出る。それこそ、あたしがリィンバウムに行った時のようなクレーターが、今回はこちらの世界で出来上がることだろう。
 あたしはそんなこと、望んじゃいない。

「ああもう! 何だかよく分からないけど、勘弁してよね!?」

 あたしは被害を最小限にするべく、際限なく流れ出る魔力の奔流を意識で掴み上げ、制御を試みた。
 ……臨界点手前まで来ている魔力を何事もなく沈静化するには、既に手遅れの状態にまで来ている。ならばと、あたしは“門”を|正確に〈・・・〉開くことに注力した。宥めることが無理なら、被害が出ない方向で力を消費し尽くしてしまえばいい。
 それが功を奏したのか、外向きに向いていた力の大半が収束を始め、同時にかなり限定された空間を、盛大に歪ませ始めた。
 ――つまるところ、あたしの周囲の空間である。当然だ、あたしが全勢力を注ぎ込んで制御核となっているのだから、“門”の中心になることは仕方ない。

「まさかこんな形で、また向こうに行くことになるなんてねー……。ま、いっか。何事もなければ、また帰ってくればいいし」

 そう、“名も無き世界”に言い残し。あたしは些か不本意な形で再びリィンバウムへと飛ばされていったのだった。



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