第1話 : 天女の導き・前編
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…ってか、既に周りから意味不明な変人として見られているがな……
高級ホテルでの芸能パーティーで、オニギリ作ってテーブルを回る背広の男。俺だって意味不明と思うよ……
ま、見知らぬ他人にどう思われても俺は気にしないし、まだ顔が割れてないから、社長に迷惑被ることも無いだろう。
「さて……こんなものかね」
一頻り作って回って一息つくと、会場の何処から「オニギリなのー!!!!!」って叫ぶ声が轟く。
星井美希はオニギリが大好き、それは多くの人が知っている事だ。
当然ながらこんな所にオニギリなんて無い、ならオニギリを見つけた彼女の行動は予測できる。
スーツの群れの隙間を抉じ開けて、彼女はオニギリがあるテーブルまで移動する。
無論。わざわざと彼女の邪魔をして不況を買う馬鹿も居なく。それに反応して多くのプロデューサー達が動く。
「人の波だね……」
その流れの起点はやはり星井美希だ。
「後はなるようになるさ」
テーブルに置いてあるオニギリは一つか二つ程度だ。
彼女なら即平らげて、目敏く次の獲物を見つけるだろうな……
なら、人の波は流動を続けこの場を掻き乱す。
「……上手く行き過ぎて何とも言えないかなぁ」
縦横無尽にオニギリを求めて移動する星井美希を目で追いながら、思わず嘆息する。
仮に彼女を担当に迎えた時は、俺程度じゃ振り回されて終わりだろう。
彼女の担当プロデューサーには、様々な意味合いで敬意を抱くよ。
そんな、何とも不甲斐ない事を思いなが、渋谷凛と十時愛梨に目を向ける。
……ん。無事に人の波から脱け出して、自分のプロデューサーと合流できたみたいだな。
……何て言うのかな。
ーーー羨ましい限りだ。
アイドルとプロデューサーがお互いに信頼しあって、共に身を委ねている。
「いつか……俺にもそんなアイドルが訪れるのかな……」
その憧憬を瞼に焼き付けて、目をつぶる。そこには名も知らぬあのアイドルが笑っていた。
あぁ、届かぬ願いだ。時の流は変えよう が無い事実。
どれ程に俺がプロデューサーとして成長しても、力を貸したいと願った人は居ない。
だから、あの人交わした約束だけは守ると誓い。ここまで来た…………
なのに……何をやってるのだろうか……
「俺の担当アイドル……か」
目を開けて呟く。
俺は念願のプロデューサーになった。
そう……なったのだ、だが…………
なっただけなのだ。
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