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遥かなる星の後
第1話 : 天女の導き・前編
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肌で空気を感じる。

 


「…………………………」



 機を伺う。息を殺し、感情を殺し……可能な限り視界の出来事を納めていく。
 人の動きは気持ち悪いほどに緩やかになり、声もエコーのようにブレる。
 ここまで来ると。今自分がどんな顔をしているのか想像がついてしまう。感情を失った冷徹な顔……
 ただひたすら、目的のために機械が如く作業をする存在。
 完全に“スイッチ”が入ってしまった。







 だが見える。この状態なら、あらゆる情報を収集・解析できる。
 今……十時愛梨と渋谷凜に群がってる人間は、必死に勧誘をしているが……
 その実。意識の半分ぐらいは星井美希に裂いている。
 本人達は上手くやっているが、視界の端に星井美希が写り込む様に位置を調節しては、チラチラと状況を確認しているのがモロバレだ。
 単純に星井美希に群がって人数が多いから、今はこの二人に勧誘をかけている状態だろうな。



 あぁ……ヘドが出る……



 奴等には、アイドルがただの商品にしか映って居ないのだろうか……




 会話が耳に入る度に……


 彼女達を、見る眼を認識する度に……



 そこに熱意も敬愛も尊重もないと解ってしまう。




 あぁ、これが俺の目指した世界の現状なのか?
 研修で嫌と言うほどこんな事は経験した。しかし、それは芸能界において底辺の現場だ。
 だが、ここは芸能界の重鎮や、名のあるプロデューサー達が集まった場所……
 胸を鋭い刃物で裂かれた気分だ……痛みはない。でも、この現状に心臓の熱が冷めていく。




「………………」






 低速する世界が徐々に正しくなる。
 ガヤガヤと耳障りな声の渦。集中が収まった今の状態では、細部まで認識は出来ないが、何一つとして変わってはいないのだろう……
 変えたい。いや、こんな事実は変えなければならない。
 あの人が目指した場所が、こんな場所な訳がない……


 ***



 風林火山……武田信玄の用いた戦術理論だとかどうとか……俺は歴史に興味は無いために、これの真の解釈は解らない。
 取り敢えず分かる事は、その場その場で求められる事は変わって行く、適切に動けよ的な感じだ。


 詰まり。俺が取るべき行動は一つ!




  オ ニ ギ リ な の !



 そうオニギリ……星井美希の大好物の一つ、オニギリをテーブル一つ一つに作っては置き、作っては置きを繰り返している。
 無論。原材料はテーブルに置いてあるライス系の料理であり、具材や味付けも他の料理である。
 まぁ……意味不明と言われるだろうが…
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