プロローグ : 新人には理不尽な難題
[7/8]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
が、声を荒ぶるらせたのに困惑したのか、苦笑いの千川さん。
「まぁ……本来ならですが」
「本来ならって……」
「名前も知らない人を、この広い東京でどうやって探すんです?写真もないのでしょう?」
「うっ……それは……そうですけど」
そうだ、俺はあの子を見つける手段は無いのだな……
目的はあくまでもスカウトであり、捜索ではない。
貴重な時間を裂いて、見つかるかどうか分からない人を探すよりは、真面目にスカウトするべきだな……
それでも……諦められない。
あの子を笑顔を見た瞬間に、何とも言えない幸福を体感した。
自慢にもならんが、俺は人生で幸福を覚えたことは片手で数えられるぐらいだ……
そんな俺に一瞬で幸福をくれたのだ。それをアイドルと呼ばずに何と呼ぶ?
だから、きっと彼女はあの人同じなんだと思う……
「千川さん……厚かましい願いですが……」
「その子をスカウトしたいんですね?」
「はい、お願いします……」
「まぁ……スカウトを真面目にしながら、空いた時間で探すのだったら良いと思いますよ?」
「本当ですか!??」
「えぇ、そうまで言うのなら、その子は貴方にとって運命的な女の子なんてましょから。なら、探すのは止めませんよ?」
「ありがとうございます!」
「ただし!本来のスカウトを疎かにしたなら、即刻止めさせますからね!」
何だよ千川さん話せば分かる人だよ。誰だよ、金の亡者とか、鬼とか悪魔とか言ってるのは!
「よし、ならば先ずは本人に出会うか、もしくは名前なり写真なりを入手しなければ……ん?」
そう言えば、名前と言うワードで引っ掛かってる事がある。
その要因である人に視線を向けると、シラッとした感じで応答する。
「何ですか?」
「俺一度も千川さんに名前で呼ばれてませんよね?」
ずっと貴方呼びだし、何か壁を感じて同じ会社の人って感じがしない…… よくよく考えてみれば、千川さんは最初から白けた態度だったような……
「その、出来れば名前で読んで欲しいですよね……」
そう、出来れば呼んで欲しい……
「……私、貴方の名前知りませんよ?」
「え?ちひろさんには履歴書その他もろもろが渡ってるでしょ!??」
「えぇ、来てますよ?」
それがどうしたと、心なしかゴミを見るような目してこちらを見る。
「はぁ……貴方は合理的過ぎます。相手が名前を知ってるからと、ほぼ初対面で自己紹介をしないなんて……」
「あ……そう言えばしてませんでしたね」
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ