暁 〜小説投稿サイト〜
遥かなる星の後
プロローグ : 新人には理不尽な難題
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が、声を荒ぶるらせたのに困惑したのか、苦笑いの千川さん。


「まぁ……本来ならですが」

「本来ならって……」

「名前も知らない人を、この広い東京でどうやって探すんです?写真もないのでしょう?」

「うっ……それは……そうですけど」




 そうだ、俺はあの子を見つける手段は無いのだな……
 目的はあくまでもスカウトであり、捜索ではない。
  貴重な時間を裂いて、見つかるかどうか分からない人を探すよりは、真面目にスカウトするべきだな……


 それでも……諦められない。



 あの子を笑顔を見た瞬間に、何とも言えない幸福を体感した。
 自慢にもならんが、俺は人生で幸福を覚えたことは片手で数えられるぐらいだ……
 そんな俺に一瞬で幸福をくれたのだ。それをアイドルと呼ばずに何と呼ぶ?
 だから、きっと彼女はあの人同じなんだと思う……


「千川さん……厚かましい願いですが……」

「その子をスカウトしたいんですね?」

「はい、お願いします……」

「まぁ……スカウトを真面目にしながら、空いた時間で探すのだったら良いと思いますよ?」

「本当ですか!??」

「えぇ、そうまで言うのなら、その子は貴方にとって運命的な女の子なんてましょから。なら、探すのは止めませんよ?」

「ありがとうございます!」

「ただし!本来のスカウトを疎かにしたなら、即刻止めさせますからね!」






 何だよ千川さん話せば分かる人だよ。誰だよ、金の亡者とか、鬼とか悪魔とか言ってるのは!


「よし、ならば先ずは本人に出会うか、もしくは名前なり写真なりを入手しなければ……ん?」



 そう言えば、名前と言うワードで引っ掛かってる事がある。
 その要因である人に視線を向けると、シラッとした感じで応答する。


「何ですか?」

「俺一度も千川さんに名前で呼ばれてませんよね?」



 ずっと貴方呼びだし、何か壁を感じて同じ会社の人って感じがしない…… よくよく考えてみれば、千川さんは最初から白けた態度だったような……


「その、出来れば名前で読んで欲しいですよね……」



 そう、出来れば呼んで欲しい……




「……私、貴方の名前知りませんよ?」

「え?ちひろさんには履歴書その他もろもろが渡ってるでしょ!??」

「えぇ、来てますよ?」



 それがどうしたと、心なしかゴミを見るような目してこちらを見る。





「はぁ……貴方は合理的過ぎます。相手が名前を知ってるからと、ほぼ初対面で自己紹介をしないなんて……」

「あ……そう言えばしてませんでしたね」




 
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