第24話
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「もう一度言ってくれるかしら?」
挨拶もそこそこに、用件を伝えた袁術軍の兵士に再び問いかける。彼が発した言葉、要求はどう考えても許容出来る様な内容では無い。
「張角の首は我らが朝廷に持っていく、此方に渡して欲しい」
孫策の殺意に近い怒気を前にして要求を繰り返す袁術軍のこの男、ある意味豪胆なのかもしれない。ただ鈍いだけだったが……、そんな男の意に返さない様子がさらに孫策の癪にさわる。
「っ!? 思春! 明命!!」
「はい!!」
「……くっ!」
孫策の様子をいち早く察知し。周瑜は二人に制止させようと声を張り上げる。
しかし二人の動きよりも速く、孫策の得物が男に振り下ろされていた。
「ヒッ!?」
情け無い声を上げる男、彼は無事だった。孫策の振り下ろした刃は横から飛んできた矢に軌道を逸らされ、間一髪の所で男は命を拾う。もう少し遅ければ男は真っ二つに切り裂かれていたであろう。
「落ち着かれよ、策殿」
狭い天幕内にも関わらず。矢で軌道を逸らす神業を披露した黄蓋は、弓を下ろしながら孫策を諌める。
いまだ弱小戦力な自分達が袁術に逆らうのはまずい。孫呉の多くは残してきている故、人質をとられているも当然だった。そして逆らえば袁術たちは――特にあの張勲は容赦しないだろう。
結局孫策たちは、要求通り張角の首を渡す他無かった。
そして孫策は荒れた。やり場の無い怒りを天幕内の物に当たり、少しでも発散しようとしていた。無理も無い。緻密に計画を立て、名声を得て独立する事に夢を見、信の置ける仲間がやっとの思いで成し遂げた手柄、それが案山子以下だと見下していた相手に横から持っていかれたのだ。
やがで暴れ疲れた孫策は泥のように眠った。周瑜は彼女を寝台に寝かせ天幕の外に出る。
ちょうどその頃、孫策の怒気に恐れをなした袁術軍達が引き上げていた。
「……」
周瑜はそれに目を向ける。張角を討ち取るための策を考え、ありとあらゆる手段で広宗を調査し。諸侯の動きを計算に入れ、袁紹達に辛酸舐めさせられても挫けず。自分達を眼中にも入れない曹操に歯軋りし。
苦労の末に袁術たちに手柄を持っていかれた彼女は―――嗤っていた。
こうして黄巾の乱は、袁術が花を、曹操が実を、袁紹が花と実の両方を手にし終息した。
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