第24話
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たされた心が興奮と共に冷め、自分達本来の願いを思い出す。
それは『安寧』。飢餓、疫病、重税、賊達など、この大陸に蔓延するそれらから解放され、ただただ家族と、友と、愛する者達と生を謳歌したいという。なんともあたりまえで、なんとも尊い願い。
華琳の言葉からは『変革』を感じさせた。彼女ならこの大陸を正してくれるのではないか、腐敗した『天』より自分達の命を重んじてくれるのではないか――故に魅せられた。
「……」
彼等の様子に郭嘉はさらに心痛な面持ちになる。
ここまで、ここまでならまだ条件は一緒だ。大陸変革という希望を感じさせた主と、安寧という農民達の望みを引き出した袁紹達、しかし自分達にはあるものが欠け、袁紹達は大きな物を持っていた。
『実績』だ。三十万を越える難民達を保護し。こうして兵士として雇い入れてる袁紹。
対する自分達はどうか? 曹操軍でも難民は受け入れている。善政に力を入れ、袁家を除く諸侯の中では栄えている方だ。――しかしそれだけだ。
大陸は袁家の話題一色、やる事成すこと全て派手で豪快な彼等は、意図せずとも曹操陣営の実績が大陸に回るのを阻止している。
実際に目の前で元難民達を手厚く遇する袁紹と、覚悟を示したが実績が無い華琳。
黄巾達が前者に流れるのは自然の理であった。
「……っ」
郭嘉が黄巾達の様子に顔を歪めている頃、華琳もまた心痛な面持ちになる。
早とちりで袁紹に落胆したこともそうだが、なにより――此度の策を自分一人で練った事に後悔していた。
黄巾の人心掌握にあたって自分の策を、自演でも華琳が傷つくことを良しとしない春蘭を除き、皆に聞かせた時だ。渋る秋蘭には半ば強引に言って聞かせ。郭嘉には彼女が思案する前に諸侯の動きの操作。そして封じる手立てを考えておくようにと命令を下してしまった。
袁紹達の今回の策、これは彼一人で考えたものではないだろう。思えば私塾にいた頃から周りの意見を取り込むのが上手かった。
対して自分はどうか? 以前に比べればいくらか融通が利くようになってきたが、それだけだ。根幹では自分の判断、考えが絶対だと思い込んでいることは変わっていない。
もし仮に、今回の策を郭嘉達と考えていたら? 袁紹達の策に見劣りしない上策を編み出し。対抗できたかもしれない。あるかもしれない結果を思って後悔するなど滑稽だが、そう思わずにはいられない。
そこまで考えて華琳は溜息を一つ洩らす。失望すべきは彼ではなく自分自身にではないか、だが顔を下に向けてなどいられない。もう一度、もう一度己を見つめ直す。遅すぎるかもしれない……しかし手遅れではない。
「ごめんなさい……稟」
「か、華琳様?」
「貴方達と一緒に考えれば上策が出来たか
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