第24話
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ない。
彼等の食欲は満たされる――だがそれだけだ!!
周りに居る諸侯達に特に反応は無い。精々いつもの『散財』か、と嫉妬と羨望の眼差しを向けるだけだ。しかし確かな知を持つもの、華琳を含めた者達にはこの策の不完全さが理解できていた。
今現在、黄巾達の数は脱走と連日の防衛戦により十八万まで減っていた。一時期は五十万の勢力が見る影も無い。だが逆の視点で見てみれば、数が減ったことにより物資や食料が行き渡り易くなったのだ。
事実此処に居る黄巾達に飢えている者はいない。数ヶ月にわたる長期戦を想定していなかった『張角』の意向も相まって、隅々まで食料が行き渡っていた。忙しさや戦から一、二食抜くことはあっても、一日何も食べない日などなかったのだ。
故に袁紹の言葉には鈍い反応しか示さない。彼等は動き出し食事を貰おうとする姿勢をみせたが、もらえるなら――という感覚であり、心の底から望んでいるものはいない。
食事で満たされた彼等の中には、袁紹についていく者もでるだろう。その数字も決して少なくないはずだ。
だが、華琳の言葉で心が満たされているにも関わらず。それでも尚、袁紹に付いて行く人間にどれほどの価値があるだろうか、その者達など欲に忠実な堕落者、俗物の類だ。
芯の通っていない人間を吸収してなんとする?
華琳達による必勝の策に横槍を入れ、『散財』して彼が手に入れられるのは俗物、文字通り財を溝に捨てるその行為は、袁紹を友として、好敵手として、そして越えるべき壁として、彼を認めていた華琳を落胆させた。
しかし半刻後、彼女の落胆は驚愕へと変貌する。
「なんだ……ありゃ……」
「わからねぇ……」
「……」
その場に集まっていた袁紹軍を除く官軍の面々は、一様にある光景を見ながら唖然としていた。
その表情は先ほどの華琳に似ている。それだけでも彼等の驚き具合を量ることができた。
彼等の目線、その先には―――
「ワハハハハハハ!」
「飲め飲め!」
「これも食え、うめぇぞ」
「おっとっと、すまねぇな」
『官軍』である袁紹軍と『賊軍』である黄巾達が、まるで宴会か祭りでもしているかのような様子で、楽しそうに食事しながら笑い声を上げていた。
他諸侯やその兵達には理解できない。つい先ほどまで自分達は戦をしていたのだ。
互いは仲間の、或いは友や親類の仇でもある。その戦の余韻が残るこの場で、何故敵同士だった者達が楽しそうに笑い合える? 何故肩を組んで酒を飲んでいられる? 何故泣きながら互いを慰めあえるのだ……。
「…………なるほどね」
「これは……まずいですね」
多くの人間が混乱に陥っている中
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