第24話
[1/7]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
前に出た袁紹に黄巾達は注目していなかった。彼等の視線は一様に華琳に注がれており、その側に居る大勢力の当主など気にもかけない。
(見せてもらおうじゃない……)
袁紹の行動に華琳は口角を上げる。慢心ではない。確信だ。
彼を封じるために用いた策、言葉は袁紹を意識して作られたように思えるが実は少し違う。
彼女は『自身』を意識して考えたのだ。
仮に自分が袁紹の立場だったとして、今の状況を覆す言葉、策が作れるか? きっと作れるだろう。だがそれは入念に時間を掛け、この状況を予め想定し。打開する言葉或いは策を作り出せればだ。事前の情報も無くこの状況を、土壇場で自分は覆せるだろうか?―――不可能だ。
それだけに入念な下準備を、危険を顧みず自演をするほどに積み上げてきたのだ。
そして目の前に広がる確かな手応え――広宗を埋め尽くすように跪き、自分に敬愛の眼差しを向けてくる人、人、人……。『自身』でも不可能と感じているこの状況を覆すことは、『自身』の想像を遥かに越えた発想と策、それは『私』以上の器であるという証明に他ならない。そしてそれはありえない。
袁紹と同じく自身の才覚に絶対の自信を持っている。華琳らしい発想と見解だった。
だからこそなのか、この状況に内心歓喜している彼女が居る。
貴方はどう打開する? どう言葉を投げかける? どう彼等の心揺さぶり満たすの? 私には無理、それを貴方が? やってみなさい……見ててあげるわ、貴方が私を越えようと足掻く姿――或いは越えた姿を!
袁紹の一挙一動を見逃さまいと彼の背中を注視する。やがて黄巾達が袁紹の存在を気にかけ始めた頃、彼は唐突に口を開いた。
「戦は終わった……ところで腹は空かぬか? 明朝から動き続けていては満足な食事もしていまい。昼食には良い時間だ。我が袁家で用意する故食べていくが良い!」
「………………は?」
その言葉に間の抜けた声が上がる。諸侯でも無い。彼等の兵でも黄巾でもない。その声の主は――他ならぬ華琳のものだった。
目を丸くし。口は半開き、およそ不可解な事象にでも遭遇したかのように、普段から凜としている彼女からはおよそ想像も出来ない表情をしていた。
「……っ!?」
その顔は徐々に歪んでいく、失望、落胆、絶望、そして――怒りと軽蔑。
今まで彼女が袁紹に抱いていたものが音を立てて崩れていく、それほどまでに彼女は先ほどの言を、それを言い放った袁紹を否定した。
こんなものなのか、私塾の頃から一目置き、互いに研鑽し合い。離れた後も動向を意識し。その善政を参考に、あの大計略に感慨を抱かせ。こうして自分に期待させた相手が頼ったものが――『財力』なのか!
出される食事はさぞかし美味な物だろう。酒の用意もあるかもしれ
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ