六十五話:ユリウス・ウィル・クルスニク
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ドガーは子どものように身を預けて目を瞑ろうとするが―――
「姉様! 死なないで下さい!」
すぐに小猫の叫びにより思考を叩き起こされる。
死ぬ? 誰が? 黒歌が?
そこまで思って痛む体を無理やりに起こしたルドガーはユリウスを押しのけて這う這うの体で黒歌の元に歩いていく。
そこでは、必死の形相で黒歌の治療を続けるアーシアを中心にイッセーを助け起こしたリアス達が円の様な物を形成していた。
ルドガーは黒歌の元に辿り着くとアーシアに茫然とした顔で問いかける。
「どういう……ことなんだ?」
「傷は塞いでいますし、治療もしています。でも……失った血が多すぎるんです」
「何とかならないのか!? 血なら俺の血を全部やったって構わない!」
「ダメよ、ルドガー。今の状態のあなたも、そして私達も血を分けたらそれこそ共倒れしかねない程衰弱しているの」
ルドガーの絶叫にリアスが悲痛な面持ちで答える。
リアスの言う通りにビズリーの攻撃を受けた彼等は最低限の体力しか保証されていない。
この状態で輸血などという行為に及べばお互いに死にかねない。
そもそも、輸血するための施設も道具もないのではどうしようもない。
「じゃあ、すぐに病院に運ぼう! アーサー! 空間を切り裂いて運んでくれっ!!」
「……すでに試しましたがこの結界が完全に解けるまではコールブランドといえど出ることは出来ません。今の状態だと解けるまで待って直ぐに行っても……すみません」
「オーフィス! お前なら何とか出来るんじゃないか!?」
「力、戻って来た。でも、我の力じゃ治せない」
絶望がルドガーを襲う。婚約指輪のはめられた左手を握りしめ、眠るように目を閉じる黒歌の顔を見る。
この瞳が二度と開かれないなど彼には耐えられない。
消えてしまうなど、信じたくない。何代えても守ると誓ったはずなのに手の平から零れ落ちていくのなんて―――
「嫌だ! いやだ! イヤダッ! 嫌だッッ!!」
あらん限りに絶叫する男の声が荒野に響き渡る。
決して壊れる事のなかった彼の心が今まさに壊れようとしている。
そんな余りにも痛々しい光景に誰しもが言葉を発せずにいた時だった。
「ルドガー……彼女のことがそこまで大切なのか?」
ユリウス・ウィル・クルスニクがその沈黙を破り語り掛けた。
ルドガーはユリウスの言葉に泣きわめく様に返す。
「当たり前だろ!? 黒歌は俺の―――婚約者なんだぞッ!!」
「っ! そうか……つまり、俺の妹になる娘なんだな」
ユリウスはルドガーの言葉に一瞬驚いたような顔を見せるがすぐに納得がいったとばかりに頷く。
そして、何故かクルスニクの槍を持ったままル
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