六十五話:ユリウス・ウィル・クルスニク
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、これがビズリーが今まで決して見せる事のなかった父親としての顔だと分かり複雑な想いになる。
「まさか……いや、お前達に越えられるのも、また……運命か」
全ての力を失ったのかビズリーの体が溶ける様に消えてなくなっていく。
それでもなお、ビズリーの顔には死に対する恐怖や虚しさという物は見受けられない。
まるで憑き物が落ちたかのように。
「だが……不思議と悪い気はせんな」
ユリウスはそんなビズリーにせめて安心して逝けるように声を掛ける。
「これ以上、母さんやクラウディアを待たせてやるな」
「そうだな。もう……長らく会っていない」
「後の事は、全部―――俺に任せてくれ」
「人に任せると思い通りにならずに後悔するものだが……最後には悪くない」
深く、深く、眠るように目を閉じて消えていくビズリーをルドガーは何とも言えない表情で見つめるが最後の最後ぐらい呼んでやろうと思い、ある言葉を呟く。
「父…さん」
その言葉に閉じていた目を見開くビズリー。
そんな視線にルドガーは恥ずかしそうに頬を掻く。
ビズリーは初めてルドガーとユリウスに向けて嘘偽りの無い微笑みを向けて最後の言葉を紡ぐ。
「お前達の父となれて……私は―――誇りに思う」
その言葉を最後にビズリーの体は消え去って行った。
残ったのはユリウスが手に持つクルスニクの槍だけである。
ユリウスはビズリーが消え去った場所をジッと見つめていたがやがてルドガーにも聞こえない程小さな声でポツリと呟く。
「俺も……あんたの息子になれて誇りに思うよ」
静かに故人を想いながらユリウスはビズリーが死んだことで結界が壊れ非常にゆっくりではあるが晴れていく空を見つめる。
術者と術がとてつもなく強力だった影響から少なくとも後三十分は残り続けるだろう。
それでもユリウスは穏やかな気分に浸っていられた。
だが、そんな気分を壊すようにユリウスにとっては何よりも恐ろしい声が―――ルドガーの悲鳴が聞こえてくる。
「ああぁぁぁああああッッ!?」
「ルドガーッ!?」
慌てて振り返ってみるとルドガーが顔を押えて時歪の因子化の痛みに地面をのたうち回っていた。
ユリウスはすぐに弟の体を優しく、強く、抱きしめて苦痛から守ろうとする。
だが、ルドガーはそんなことなど関係ないとばかりに苦しげに口から血を吐き出してユリウスの白いコートを真っ赤に染め上げる。
「大丈夫だ…ルドガー…っ。兄ちゃんが絶対にお前を守ってやるからな…っ!」
「兄……さん」
ユリウスはまるで幼いルドガーに語り掛ける様に優しい声で囁きかける。
するとその声に安心したのかル
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