六十五話:ユリウス・ウィル・クルスニク
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なるがそれが何なのかを理解したルドガーが動かなかったので自身も黙って弾丸を受ける。
すると―――二人の力が“何倍”にも膨れ上がった。
「なぜ、ルドガーとユリウスの力が急に! まさかっ!?」
「俺は……あれで終わったなんて一言も言ってないぜ」
「助かった。ありがとう―――イッセー」
礼を言うルドガーに声も出さずに笑いかけてイッセーはその場にどさりと崩れ落ちる。
イッセーは致命傷クラスから最低限の復活を果たすとすぐにグレートレッドから無理やり更なる力を借り受けたのだ。
体はとうに限界を超えていたがそれでも勝利を掴み取るために己の肉体を犠牲にしてまでも二人に倍加の力を譲渡したのだ。
『まだ……終われない』その言葉の通りに実践してみせた。
「ルドガー、気張れよ!」
「兄さん…こそっ!」
黒い骸殻の上に赫い光が宿った兄弟の剣舞はさらに勢いを増していく。
時を刻む針は二本無ければ意味がない。
一本だけが時を刻んでいても正しい力は発揮しない。
故に乱れ舞う二本の針が揃った今こそ―――その真価を発揮するのだ。
二人がビズリーを挟み込みXを作るように双剣をクロスさせる。
それはもう二度と交わるはずのなかった兄弟の道が再び交わったことを示すかのように。
二人の覚悟と意志を示すように―――
『祓砕斬ッ! 双針乱舞ッッ!!』
二つの揺るぎなき信念が重なり合い、無と無限という、越えられぬはずの壁を越える。
抗う事も出来ずに切り裂かれたビズリーの体からは無限の象徴であった黒いドラゴンの翼が消えていく。
それに伴うように力が抜けていきビズリーはガックリと膝をつく。
そして、持ち主と同じように地に落ちた時計を今度こそもう一度が無い様にルドガーが槍で粉々に砕く。
だが、ビズリーという男の執念はその程度は収まらない。
なおも戦う姿勢を見せて未だに残る無の力でクルスニクの槍を創り出してルドガーを貫こうとする。
「させるかっ!」
しかし、その槍はユリウスによって弾き飛ばされてしまう。
ユリウスは弾いた槍を手に持ち逆にビズリーに突き付ける。
だが、それでもなおビズリーは気を抜けばすぐにでも崩れそうになる体を何とか奮い立たせ拳を構える。
必ず願いを叶えるために負けられないと言わんばかりに。
そんな痛々しげな姿にユリウスは顔を歪ませて苦しそうに呟く。
「もう、やめてくれ……。俺の憧れた父さんはそんなことはしない」
「ふっ……ふふふ。父さんか……久しく聞いていなかったな」
ビズリーはユリウスの言葉に観念したように笑い、決して人前ではみせる事のなかった柔らかな表情を見せる。
ルドガーは余りにも想像できない表情に驚愕するが
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