六十五話:ユリウス・ウィル・クルスニク
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お互いに弾き返し後ろに飛び下がる二人。
ユリウスは弟達を庇うように前に立ち白いコートをはためかせる。
そんな兄の後ろ姿にルドガーは声が出せない。
「兄…さんっ…!」
「しっかりしろ、ルドガー。……彼女を守りたいんだろ?」
「っ! うん…!」
振り向くこともなく語られた言葉にルドガーは心を奮い立たせ力強く地面を踏みしめる。
そして、血だらけのまま倒れている黒歌を抱き上げる。
大量に出血した為か虚ろな目のまま自分を見つめる彼女の様子に彼の顔には悲壮感が漂うがすぐに顔を引き締めて安全な場所にまで連れていこうとする。
だが、そんな時間をビズリーが与えるはずもない。
すぐに、追い討ちをかけるために突進をしながら拳を降り下ろしてくる。
二人を庇うためにユリウスがそれを防ぐがビズリーの圧倒的な力の前に押し下げられる。
「ぐっ! ルドガー、時計を! 俺のっ!」
「分かった!」
ユリウスの声にルドガーは迷わずに銀の時計を取り出してユリウスの方に投げる。
再び動き出した銀の時計が持ち主の手の中に戻ってくる。
ビズリーはその様子に嘲笑うように鼻を鳴らす。
「今さら時計一つのお前の骸殻で私に通用すると思っているのか?」
「確かに、俺は時計一つではフル骸殻にも至れなかった。だがな―――」
時計を受け取ったユリウスはその姿を変えていく。
顔以外を鎧で覆ったスリークウォータ骸殻。
本来であればこれがユリウスの限界だった。しかし、変化は止まることはない。
「以前、分史世界の俺に言われたんだ。
時計一つでも、家族の為なら―――幾らでも強くなれるってな!」
さらに強い光がユリウスを包み込み骸殻が全身を、残された顔を覆っていく。
骸殻は、人の欲望に、意志に反応する力だ。
ならば、世界を越え、死を越えてもなお。
ただ一人の弟を守り抜こうという強い意志を持つ兄が―――フル骸殻に至れぬ道理などない。
「お前もフル骸殻に至ったか!」
「弟に超えられるのは嬉しいが、俺にも兄貴としての意地があるんでね!」
ついに目標だったフル骸殻に至ったユリウスはビズリーを押し返す。
かつては最強になるためにこの姿を求めた。だが、今は違う。
ただ一人、弟を守るために骸殻能力の極致に至った。
ユリウスは気合いの雄叫びを上げながらビズリーに斬りかかる。
ルドガーはその間に黒歌をイッセー達の元に連れていく。
そこでは『慈悲深き聖母マリアの加護』の自己治癒能力により何とか回復を果たしたアーシアが残った力を振り絞って全員を最低限ではあるが回復させていた。
「アーシア、黒歌を頼む」
「……はい!」
額から汗を滴ら
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