主神御乱心
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「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
【テュール・ファミリア】の本拠は吹雪が吹き荒れているように冷え切っていて、さらに指一本も動かすことも叶わぬ程に張り詰めていた。
それは偏に主神、テュールが神威を加減せずに放出しているからで、テュールからは後光を通り越して神怒を現すようなどす黒いオーラが沸き立っていた。
その巨岩に押し潰されているようなプレッシャーにデイドラ、リズ、ノエルでさえテュールの前で正座して押し黙っていた。
「………………で、どの面を下げて帰ってきたのじゃ、デイドラ?」
神威の波動が本拠周辺にまで波及していて水を打ったように静寂に包まれた部屋に重々しいテュールの御声が響いた。
「……………………………」
デイドラはノエルに言ったとおりの言葉をそのままテュールに言えばいいのだが、まさか納得してくれると思っていないので、固く口を閉じてじっとしている。というよりかは、テュールの神威に顔をあげることさえできない。
「答えられぬということかのう?」
厳めしい表情のまま、テュールは沈黙を守るデイドラを詰問する。
「…………………………」
「っ、黙っておら――」
「あなたがそんなに神威をだだ漏れにしていたら話せることも話せなくなるに決まってるでしょ」
怒りで掟を忘れ、【神の力】を発動しかけたテュールの耳にミネロヴァの苦しげな声が飛び込んだ。
「ミネロヴァ…………」
テュールは声に引かれて扉の方に目を遣った。
そこには息も絶え絶えなミネロヴァがいた。
この時初めて自分が神威、それもミネロヴァが息を上がらせるほどの神威を発していることに気付き、収めた。
重圧が消え、四人が体に込めていた力を弛緩させる。
「【神の力】を発動しかけたように思えるけれど、まさか発動したらどうなっていたかわからないとは言わないわよね」
ミネロヴァは落ち着きを取り戻したテュールに言った。
「むぅ………………」
テュールはそれに返す言葉もなく、呻く。
「本当、此の親にして此の子あり、って感じね。一度熱くなったら他に何も考えられなくなる」
「さぁー、何のことじゃろうな」
「……………………………」
「……………………………」
心当たりしかなかったテュール、ノエル、デイドラは視線を宙に泳がせてごまかしたり、顔を背けたり、俯いたまま黙り込んだ。
「まぁ、それはさておいてじゃ、デイドラ、言い忘れておる言葉はないかのう?」
わざとらしい咳ばらいに続けて、テュールはデイドラに流し目で言った。
「?……ああ、ごめん」
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