煉獄からの遣い
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馬は主を庇い倒れ伏す】
やがて、奔流は秩序のない荒れ狂う暴波と化し、身体を掻き回されている錯覚を覚えた。
ついに暴威に身体が音を上げはじめる。
身体を激痛が駆け巡り、骨は軋み、肌は引きちぎれそうになる。
前ならここで暴威に負け、手綱を離して、大輪の紅蓮の花を咲かせていたが、使命感だけで、救いたい一心で、紡ぎつづける。
【戦野は屍で埋め尽くされ、黒血に染められたり】
すると、その意志に応えたのか、リズを中心にして緑光の円が地面に広がりはじめる。
円は瞬く間にルームの床を覆い尽くし、さらに速度を衰えさせず、四方の通路を突き進み、リズから五〇〇Mの地点で止まる。
その円に覆われた床からは同じ色の光粒が絶え間無く生み出され蛍のように揺れ漂った。
(お願い、私の精神力を使い果たしてもいい!ダメなら命を削ってもいい!だから、デイドラを助けて!!)
リズは痛みも忘れて、心中で叫ぶと同時にリズの背からルームの天井に届くほどに巨大な緑色の双翼が咲いた。
その双翼からも鱗粉の如く光粒が放出された。
【故に我、懇願す】
と、紡ぎ終えると同時に、大鐘を叩く荘厳な音とともに、リズから全周囲に緑閃光の波動が走った。
【兵を、馬を癒せよ】
数拍後に再び大鐘が打ち鳴らされて、よりまばゆい波動が発せられる。
【兵を奮い立たせ、馬をいななかせ、我らに勝利の希望を与えよ】
大鐘が鳴らされ、波動が走るたびに、無秩序に漂っていた光の粒はリズに集まりはじめる。
【混血なる我が不遜たる懇願に応え】
その光粒はデイドラに翳しているリズの手に寄り集まり、小さな緑光球体を成したかと思うと、次第に体積を増大させていき、
【癒しによって、その至大なる霊威を示せ――】
【ウェニ・スピリツス・サンクチュアリウム】!!!
詠唱の終わりを待っていたかのように発せられた轟くような鐘音に呼応するように緑光の円に同等の大きさの魔法円が浮かび上がり、リズとデイドラを呑み込むように新緑の柱が屹立した。
そして、ややあって、魔法円とともに双翼と柱は輪郭を薄めていき、ルームは普段の薄暗さを取り戻す。
そのルームの中央、リズは前に横たわるデイドラを不安げな顔で覗き込んでいた。
傷は完全に跡形もなく消えていた。
それどころか身体の至るところにあった擦り傷や引っかき傷、内出血さえも消えて、ダンジョンに潜る時と変わらぬ姿になっていた。
「うっ…………」
「デイドラ!大丈夫!?」
リズは声を漏らしたデイドラに飛び付くと仰向けにして、上半身を起き上がらせた。
「…………リ、
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