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乗せた首
5部分:第五章
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「全てわかりました。それにしても」
「それにしても?」
「不思議なことです」
 首を捻っての言葉だった。
「こうして首が離れてまたくっつくとは。こんなことが起こるとは」
「何でも起こるものだ」
 首を捻るその勝宏に対して答えた。
「この世の中というものはな。だから」
「こんなこともあるというわけですね」
 どうにもまだ信じられないといった顔で述べる。落ち着いたとはいえまだ違和感が残っているというのもありそんな顔になっていたのだった。
「まあそうだ。では帰るのだな」
「はい」
 安倍に対して言葉を返す。
「これで。ただ」
「ただ。何だ?」
「いえね。折角首がくっつきましたし」
 笑いながら言う。今度は顔が苦笑いになっていた。
「もう二度と離れたくはないです」
「では侍は辞めるのか」
「そう考えています。切った切られたはもう」
 また述べる。
「勘弁ですよ」
「そうか。では寺に入るのだな」
「そういうことです」
 この時代はよく出家をする者がいた。戦国時代まではそうだったが武士も公家も出家する者が多かった。これも時代の風習の一つだった。帝も出家されて法皇となられる方が多かった。聖俗が厳しく分かれる江戸時代まではそうだったのだ。
「これからは。今までの戦での相手の供養をします」
「そうだな。いいことだ」
 それは安倍もいいと言う。笑顔で。
「ではな。今度は寺で会おうぞ」
「はい」
 二人は笑顔で別れる。勝宏は奇妙な事態から逃れることができた。だがこのことは今でもこうして話に残り人々に何かを見せているのだった。


乗せた首   完


                    2007・9・3

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