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真田十勇士
巻ノ五 三好清海入道その五

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「では拙僧もこれより殿と寝食を共にし何処までもついていきまする」
「頼むぞ」
「例え火の中水の中」
 大きな盃で酒も飲みつつ言う。
「殿と共に」
「それではな」
「それはよいが」
「うむ、殿と共にいるのはよいが」
「我等もな」
 しかしだ、穴山達三人はだった。
 その清海の食いっぷりと飲みっぷりを見てだ、顔を顰めさせて言った。
「食うのう」
「そして飲むのう」
「馬か牛の様じゃ」
「身体が大きいから当然じゃが」
「それでもな」
「底なしではないか」
「ははは、わしは幾らでも食い幾らでも飲む」
 清海は三人にも笑って答えた。
「むしろ食って飲まないとじゃ」
「どうだというのじゃ」
「そうせねば」
「何かあるのか」
「動けぬ」
 笑って言う清海だった。
「とてもな」
「いや、それは誰でもだぞ」
「誰でも食わねば死ぬ」
「飲むことも必要じゃ」 
 三人は清海にこぞって言った。
「御主の場合は食い過ぎじゃ」
「しかも酒も浴びる様ではないか」
「般若湯といっても慎め」 
 酒を般若湯と呼んで飲む、僧侶の形式ではある。
「全く、身体が大きいにしても」
「力士並ではないか」
「食い過ぎじゃ」
「ははは、よいではないか」
 清海に眉を顰めさせて言う三人にだ、幸村が笑って言った。
「大食位はな」
「殿がそう仰るのなら」
「我等もいいですが」
「それならば」
「うむ、ただ酒はじゃ」
 こちらのことについてはだ、幸村は清海にこう言った。
「大酒はな」
「慎むべきというのですな」
「うむ、あまり飲み過ぎぬことじゃ」
 酒についてはというのだ。
「大酒は毒ともなく」
「百薬の長であると共に」
「百毒の長ともなる」
 薬が転じてというのだ。
「だからな」
「あまり深く飲んではいかんですな」
「そこはわかっていて欲しい」
「ではあまり多くはですか」
「飲まぬことじゃ」 
 それが大事だというのだ。
「食もな、一つのものよりもな」
「餅なら餅だけではなく」
「米や麦、芋や菜に果実に魚とな」
「色々とですか」
「食するのがよいという」
「左様でありますか」
「医術の書にも書いてある」
 幸村はそちらの書も読んでいる、それでこう清海にも語るのだ。そうしたことにも通じているからである。
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