3部分:第三章
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男でもなさそうじゃな」
勝宏を見てすぐにそう述べてきた。
「だが困っておる。違うか」
「おわかりなのですか」
「ははは、わしじゃぞ」
義満は見抜かれて驚いている勝宏に対して笑ってみせてきた。
「足利義満じゃ。わからぬわけではあるまい」
「では」
「ただしどう困っておるかまではわからん」
そのうえで彼にこう告げてきた。
「そこまではな。それはこれから聞こう」
「有り難うございます」
勝宏はあらためて彼に対して頭を垂れた。敵の主であったが今はそんなことはどうでもよくなっていた。まずは自分の首である。
「ではお話しましょう」
「これ」
周りの者に目を向けてから述べる。
「その方等は下がれ。よいな」
「はっ」
周りの者を下がらせる。信頼できる者だけ残した。これも全て彼の気配りであった。中々どうしてそうしたこともできる男であった。
こうして勝宏を話し易くさせる。そのうえで話を聞くのであった。
「それではじゃ」
話をしやすくさせて勝宏に問うてきた。
「その方。どう困っておるのじゃ」
「実は首がおかしいのです」
「首とな」
義満は勝宏の言葉に目を少し動かしてきた。そのうえで彼の首の辺りをじっと見る。
「そういえば動きがちと妙であるな」
「おわかりですか」
「まるでただ上に乗せておるようじゃ」
やはり彼は鋭かった。
「違うかのう」
「うっ、それは」
「ふむ。やはりな」
勝宏の様子を見て自分の読みが正しいと確信した。その一見鈍そうな目が鋭くなった。その鋭い洞察力は天下人ならではであった。
「御主、この戦で首を刎ねられたな」
「はい」
素直に答える。
「その通りでございます。それで今は乗せているだけです」
「そうか。それでも生きているのか」
「これは一体。どういうことでございましょう」
兵の一人が義満に問うた。
「首を刎ねられて生きておるなぞ」
「しかもこうして普通に話しているなぞ。これは」
「わしにもわからん」
義満は首を捻ってそう述べた。
「わしも色々話は聞いておるがこうしたことははじめてじゃ。死んだ者が生き返っただのそうした話は聞いたことはあるがな」
「私は生きています」
勝宏は必死な顔でそう述べた。
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