第十八夜「向日葵」
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「やめてくれっ!お前は誰なんだ!?なぜこんなとこにいるんだよっ!」
少年は僕の問いに答える風でなく、無表情な顔になって語り始めた。
「彼は…殺されたんだよ。本当は、直ぐに病院へ連れて行ってたら助かったのにさ。恐かったんだ、彼の両親は。だってさ、お互い疑心暗鬼になってて、子供のことなんてさっぱり忘れていたんだから…。彼の父親は母親…妻に対して、激しい怒りと憎悪をぶつけていた。そして、何回目か…殴り付けようとした時、彼が止めに入ったんだ。彼は顔面を思い切り殴り付けられ、その勢いでテーブルの角に後頭部をぶつけた。彼は倒れたまま動かず、後頭部からは大量の血が流れ出ていた…。」
な、何なんだ…何なんだ!僕なのか?そうやって僕が死んだって言うのか!?
そんなはずはない。こうやって生きてるじゃないか!
「そんな彼を見た両親は、さっきまでとは掌を返すように、彼をどうしようかと話し合った。そして、彼を車のトランクに放り込み、車を発進させたんだ。実の息子だよ?可笑しな話しだよね?でも、そうしたんだ。自分達を守るために…。そして、この畑へやってきた。以前は大きな畑だったんだけど、ここの所有者が亡くなって以降、荒れて行くに任せてあったんだ。それを彼の両親は知ってた。だから、この荒れ果てた畑に、まだ息のあった彼を…埋めたんだ。」
何を言ってるんだ?どこの世界にそんな親がいるんだ?
僕は笑った。あまりにも可笑しすぎるじゃないか!?
有り得ない!バカげてる!
じゃあ、ここにいる僕は誰なんだよ…。
― 誰…? ―
僕は笑うのを止めた…。急に恐怖が込み上げて来たからだ…。
分からない…。この少年は“彼”と言っている。そう、少年は“お兄さん”でなく“彼”としか言ってないのは何故だ?
「あ…れ…?」
「やっと思い出したようだね…。」
…あぁ、そうだったんだ…。
「そう、お兄さんはその姿の“彼”じゃないよね?」
なんだ…そういうことだったのか…。
「“彼”を探してる人は、もうすぐ“彼”を見つけるだろうね。」
人ですら…なかったんだな…
「“彼”が見つかる前に、僕はどうしても君を連れて行かなくちゃならなかった…。」
“彼”は…僕の下に居たんだ…
「そうしないと、君は“彼”の全てを奪ってしまうから…。」
そう…僕は“彼”を食べていたんだ…そして…
「“彼”を解放してあげなくちゃね?」
“彼”の記憶さえ奪おうとしていたなんて…!
「さぁ、向日葵よ…!」
少年がそう言った刹那、景色が一変した。
あれだけあった黄色い花々が消え、空の青も消え失せた。
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