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乗せた首
1部分:第一章
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けた。
「起きろ」
 命令した。すると本当に起き上がった。
 動くように思うと立ち上がった。それを見ていけると確信した。
 首を持つように念じる。すると起き上がった身体は勝宏の首を手に持った。そうして身体の小脇に抱えてしまった。そのまま穴を出ようと身を乗り出させると見事にでられた。こうして何とか難は避けられたのであった。
 ところがすぐに別の難がやって来た。それは穴を出たところにあった。
「う、うわっ!」
「ば、化け物!」
「何っ、化け物とな」
 穴を出たところに幕府の兵達がいたのだ。彼の姿を見て一斉に驚きの声をあげたのである。
「首がないぞ!」
「脇に抱えてるぞ!」
「ふむ」
 その敵兵達の言葉を聞いてあらためて自分の姿を思い浮かべる。思えば確かに恐ろしい姿である。
「確かにのう。そんな者を見ればわしとて」
「何とかしろ!」
「しかしどうするんだ!」
 兵達は完全に怖気づいていた。勝宏はそんな彼等を見て今の自分がどれだけ恐ろしい姿をしているのかあらためて気付いた。そのうえで彼等に声をかけた。
「おい」
「な、何だ?」
「喋ったぞ」
「戦は終わったのだな」
 そう兵達に尋ねる。
「山名が敗れて」
「そ、そうだ」
「それは貴殿も承知の筈だ」
 兵達は腰を抜かして震えながらも彼に説明する。これは彼もわかっていた。
「そうじゃのう。ではわしも何もせん」
「何もせんだと」
「化け物でもか」
「わしは化け物ではない」
 むっとして言い返す。流石に化け物化け物と連呼されては気分がよくない。
「この通り生きておるではないか」
「しかしな」
「そうだそうだ」
 兵達はそんな彼に言い返す。

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