第十六夜「ハッピー・プリンス」
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いからいいんだけどさ。」
なんという言い草…。あなた私の親友じゃなかったっけ?
「七海…お願いだから、そう歯に衣着せないセリフはぶつけないでよ…。自分でも自覚はあるんだから…。」
私は頬杖をついて、弱々しく溜め息を洩らした。
「もう、あんた達ってば…。」
呆れた顔して、七海も溜め息を吐いたのだった。
☆ ☆ ☆
五月も終わりを迎える頃になると、みんなすっかりまったりモード。桜も見事な葉桜となって、緑の若葉を手いっぱい広げていた。
そんなある日の出来事。それは事件と言ってもいいかも知れない。それとも事故かしら?まぁ、どっちだって構わないわ。それは部活の終わりから始まった。
私はなぜか吹奏楽部に所属してる。入学した時に見学しに来て、なんとなく居ついてしまった。
楽器はフルートをやっているんだけど、これまた勧められるがままになんとなくやっているのよね…。最初は音が出なくて嫌になってたんだけど、人なんて現金なものね。音が少しずつ出るようになった途端、楽しくてしょうがなくなった。でも…。
「高下さん、ちょっと来て。」
部活が終わって帰宅しようとしていた私を、部長の柳澤慎司先輩が呼び止めた。いやに堅い表情をしているような…。私は荷物を机の上に置き、部長の所へ行った。
柳澤部長には、実はかなりのファンがいる。顔やスタイルが良いだけでなく、とても優しくて頼りになる人なのだ。包容力があるって言ったらいいのかしら?
あの七海もチェックしてたしねぇ…。
「部長、何か?」
私が前に来て尋ねると、
「あのさ、最近の君の演奏なんだけど…ちょっと気になってね…。」
ああっ!やっぱりバレてる。不安定な部分が出てるなって、自分でも気付いてたけど…。
「悩み事があるんだったら相談に乗るよ?もしかして…好きな人がいるとか?」
私は先輩のこの言葉にドキッとした。一瞬、黒崎のことを思い浮かべてしまったからだ。
―なんで私がドキッとしなきゃならないのよっ!―
「えぇっと、そういうのじゃなくて…。なんて言ったらいいのかしら…その…。」
私はしどろもどろになって、あたふたした。どう言ったら良いのか…。そんな私を見て先輩が言った。
「なぁ、僕と付き合ってくれないか?」
―…はぃ?今、なんて?―
突然のセリフに、私は真っ白になった。まさか…告白?この私に?
誰もいなくなった音楽室。目の前にはジッと見つめている柳澤先輩…。
―ど、どう返事したら…―
私の思考回路は猛スピードで答えを探している。確かに先輩と付き合うことが出来たなら、学校生活はもっと楽しくなると思う。だけど、こんなフラフラした気持ちで軽く考えて楽な方へ逃げてはいけない気もするのだ。
そんなことを考えていた
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