第十六夜「ハッピー・プリンス」
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て私を行くように促したので、私は何か引っ掛かるものはあったけど、そんな余裕もなく走って教室に戻ったのだった。
☆ ☆ ☆
数日の間、黒崎は意外とおとなしかった。と言っても、私に対してと言うことで、他で煩いのは変わらない。
お昼休み。今日は音楽室にいるらしく、中庭に笑い声がこだましていた。
「なぁ、密。あれ弾いてくれよ?前弾いてたヤツ。」
黒崎と同じくらい煩いこの声は…更科かっ!ってこの中庭、相変わらずよく響くなぁ…。
そんなことをぼんやりと考えてると、煩いお喋りに代わってピアノの音が響いてきた。
―ショパンの幻想即興曲…!―
本当にあの黒崎が演奏してるのかしら?CDじゃなくて?そんな私の問いに答えるように、前に座っている親友の七海が答えた。
「黒崎君って、確かどこかのコンクールで入賞したんじゃなかったっけ?凄いわよね〜。でも、あんまり弾いてるの聴いたことないから、ラッキーだよね〜?」
ラッキーなのかしら?私は開いた口が塞がらなかった。そんな話しは一度も聞いたことがなかったし…。
そんな私に追い打ちをかけるように、七海は喋り続けた。
「ねぇ知ってた?一年の時、全校朝会で校歌の伴奏やってたのって、黒崎君だったんだよ?」
彼が成績優秀なことは知ってる…。スポーツ万能なのは、去年の体育祭で見せ付けられた…。その上、音楽ですか?欠点は…?
―煩いところ…。―
いやいや、まだあるはずよ…!?でも、浮かんでくるのはヤツのいいとこばかり。
―あ、あれ…?変よね、私…?―
今までの私だったら、十個くらいスラスラと思い付いたのに。
「美由?ねぇ、美由ってばっ!」
気付くと、七海が不思議そうな顔して私を見ていた。どうやら私はボケッとしていたみたい。
「どうしたのよ!?ここ最近ずっとそんな感じゃない。お喋りしてると思ったら、急に黙り込んでボケッとしてみたり。ねぇ、黒崎君と何かあったんじゃないの?彼の方だって、あれだけ美由のこと構ってたのに…。」
「別に何も無いわよ?何変な顔してるのよっ!あいつだって年中私と口喧嘩なんてしたくないからでしょ?」
七海に向ってそう言ってはみたものの、自分でも感じてる。
本当は…あの昼休みから私はなぜか落ち着かなかった。その理由が自分でもよく分からないのよね…。
特に…黒崎の話しになると、何となく胸が苦しいって言うか痛いって言うか…。自分でもどうしたらいいのか全く見当がつかないのだ。
世間ではこういうのを<恋>とか言うらしいけど、断じて違うわっ!
七海はそんなボケッとしてる私に言った。
「美由さぁ、自分がいつも百面相してるの気付いてる?傍から見たらちょっと変よ?黒崎君の話しになったりすると、特にひどいわね。まぁ、私は面白
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