第十六夜「ハッピー・プリンス」
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のベンチに歩み寄ってそこに座った。
お弁当を取り出して広げてると、黒崎が少し離れて座ってきた。手にはパン屋さんの紙袋。開いたと言うより、上から取ったと言った方がいいわね。溢れんばかりの量がある。一体幾つ買ったのやら…。
「それ、あんた一人で食べるの?」
私は横目で見て黒崎に聞いてみた。
「ああ、そうだぞ?」
なんの躊躇いもなく即答。でも、いくらなんでも栄養偏るんじゃないのかなぁ?とか思ってしまうけど、私には関係ないしねぇ。
―さて、頂きますっ!―
私はそう呟いて食べ始めた。が、そんな私を黒崎がじっと見つめる…。
「なぁ、その卵焼き一つくれよ〜。」
見ていたのはお弁当の中身…。
「はぃ?なんであんたにやんなきゃならないのよっ!」
私はそう言って牽制するけれど…、結局は黒崎の物欲しそに見つめる子犬のような目に勝てず、一つだけ与えてしまった。
「んまいっ!」
目をキラキラさせながら、黒崎は実に美味しそうに食べたのだった。
―この犬にエサを与えないで下さい。―
黒崎を見てそう思っていると、調子付いた彼は、また子犬が尻尾を振っているような目付きでおかずをねだってきた。
「なぁ、アスパラのベーコン巻きも一つ欲しいなぁ〜。」
なっ!?なんて図々しい!
「だからっ!何であんたに…」
黒崎は私が言い終らないうちに、紙袋からあるものを取り出して私に見せ付けた。そしてニタリッと笑って言った。
「これと交換でどう?」
それはっ!滅多に買えないクロワッサンでは…!う〜ん、何か裏がある様な気がするのは、私の考えすぎかしら?でも、花より団子って言うしね?(ちょっと違う気もするけど…。)
「仕方ないわね…。このミニトマトも付けるわ。」
「サンキュ〜っ!」
別に感謝される覚えはないけど、交渉成立ね。
黒崎は、私が蓋に取り分けたおかずを美味しそうに頬張っている。
―あれ?何か…。―
変な気持ちになった。それが何なのかは分からなかったけど…。
時計を見ると、後少しで予鈴の鳴る時刻だった。
「もうっ!あんたとこんなことしてたから、こんな時間になっちゃったじゃないのよっ!」
「うゎっ、ほんとだ!ヤッバ…早く食わねぇと!」
それから二人して、まるでヤケ食いしてるかの如く昼食を平らげたのは言うまでもない。
予鈴が鳴ったので、私は黒崎に向かって言った。
「私が先に行くから、あんたは少し経ったらくるのよ?変に勘違いされるのは嫌ですからねっ!」
「…俺は別にいいんだけどな…。」
黒崎がボソリと呟いた言葉は、私の耳には届かなかった。私は「何か言った?」と聞き返したけど、彼は「別に?」と不機嫌に言ったのだった。
「んなことより早く行けよっ!遅れちまうぜ?」
黒崎はそう言っ
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