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幻影想夜
第十六夜「ハッピー・プリンス」
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…慣れるしかないのかも。近かろうが遠かろうが、私はきっと黒崎のあの騒がしさには耐えられないと思うし。

―でも、慣れろって言われてもねぇ…。―

 今日もイライラしながら授業を受ける。
 外は私の心とは裏腹に、快晴の清々しい青空だった。


  ☆  ☆  ☆


 昼休みは戦争だ。四限終了のチャイムが鳴り始めると、みんな目を光らせる。
 その理由はパンの購買だ。
 毎日パン屋さんが売りに来るパンを目がけ、皆は一気にダッシュする。私はお弁当だから関係ないんだけど…。

―キーンコーン…―

「起立っ!」
 まだチャイムが鳴り終わってないのに、学級委員の更科が号令をかける。
「礼っ!」
 全員が申し合わせた様にその号令に従うと、一気に教室を駆け出して行く。気付けば先生さえいない…。
「ま、いいんだけどねぇ。」
 本当はこのパン屋さんのクロワッサンが絶品で、私も買おうかなぁとか思ったりもするんだけど、あの人混みの中に飛び込むのは…。
 でも、すっごく美味しいのよ?外側のサクサクと内側のふわふわした食感が絶妙で、噛んだ時に口の中に薫るあのバターの風味が…。考えるのは止めよう。
 私は食事をするために裏庭へ向かった。
 その途中、パン争奪の喧騒を横目で見ながら通り過ぎる。黒崎の声が一際大きく響いていたが、頭の中で器用に削除しつつ、いつもの裏庭へと出た。
「ハァ…やっと静かになっ…」
 こんな呟きも途切れさせるように…
「お〜っと、高下発見っ!」
 後ろから、とても嫌なヤツの声がした。さっきも頭から削除したばかりなのに…何でこうも私を苛立たせるのか思案に暮れてしまう…。
「高下って弁当なんだよな?なぁ、一緒に食わねぇ?」
「はぁ〜?何言ってんの?あんたは友達と食べれば良いでしょうが!私は桜を見ながら、一人でゆっくり食べたいのよ!」
 黒崎って何考えてるのか分かんない。
 取り敢えず外方を向いて、私はいつものベンチへ向かったのだけど…後ろから「なぁ、いいだろぅ?」と声を掛けながら黒崎がついてくる。
 私はクルッと振り返って言った。
「だ・か・らっ!何であんたと一緒に食べなきゃいけないのよ!」
 でも黒崎は、そんな私をキョトンと見つめて…
「俺が一緒に食べたいから。」
 さも当たり前と言う感じで答えた。
 なんだコイツ?でも、ここで言い争うほど私は大人気ない人間じゃないので、「まぁ、今日だけ我慢しよう…。」と考えて勝手に付いてくる黒崎を無視することに決めたのだった。

 桜の花が綺麗に見えるベンチがある。入学した時からここを使っているのだ。
 でも、なぜだか分からないけど、この裏庭には殆ど人が来ない。今日は友達連れで来てる人達がチラホラいるけど、私一人の時の方が断然多い。
 私はいつも
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